海の豊かさを守ろう gyoppy!

「この技術で、戦争をなくせる!?」日本にあった! 石油の奪い合いを止めるリサイクルの仕組み

Gyoppy! 編集部

服の回収箱

日本環境設計株式会社。一見すると、お堅い印象を感じる名前のこの会社は、「BRING」という、服から服をつくるリサイクル・プラットフォームを提供する会社だ。

BRINGには、パタゴニア、良品計画、The North Faceなど、国内外の有名企業がこぞって参入している。

服から服のリサイクルに用いられる技術を表した図
服から服のリサイクルに用いられる技術を表した図

2007年に、資本金120万円・創業者2名でスタートした小さなベンチャーだった同社は、今や資本金42億円の企業に成長し、世界中から注目を集めている。同社は主に、3つの優れたケミカル・リサイクルの技術開発を行ってきた。

(1)衣類などの綿製品からバイオエタノールをつくる
(2)携帯電話のプラスチックを熱分解し、再生油をつくる
(3)化学繊維やプラスチック製品からポリエステルを再生する

こう書くと難しいかもしれないが、簡単に言ってしまえば、上記の技術を組み合わせることで衣類やプラスチック製品を、再生利用して循環させることが可能になる。また、衣類に関しては特定の繊維を対象にすると1着の服から、ほぼ1着の服を作ることができるという。

プラスチック製品のうちPET素材のものやポリエステルを再生する技術を表した図
プラスチック製品のうちPET素材のものやポリエステルを再生する技術を表した図

Gyoppy!チームが、これまで海洋プラスチック問題やリサイクルについて取材を行ってきた中で、異口同音に唱えられたのは「廃棄されたプラスチック製品は不純物が多く劣化しているため、リサイクルが難しい」という事実だ。

つまり、日本環境設計の技術は、これまでは出来なかったことを一部において可能にした。とはいえ、「技術力だけでは循環型社会は実現できない」と同社は考える。技術力を生かす「リサイクルの仕組み」を構築したからこそ、同社のプラットフォームが注目を集めている

そのためには、消費者への働きかけや、リサイクルの回収拠点をどうするか、メーカーや流通各社の説得などの課題を一つひとつ解決しなくてはならなかった。日本環境設計は、どのようにして、それを成し遂げたのか?

当時の苦労やリサイクルにかける思いを、共同創業者・取締役会長の岩元美智彦さんに聞くと、「この技術があれば、世界から戦争やテロは減らせるかもしれない」と熱く語ってくれた。

「衣類→ポリエステル→衣類」の循環を可能に

BRINGホームページ
服の回収とリサイクル - BRING

── 衣類からバイオエタノールやポリエステルをつくる技術を開発されていますが、なぜ最初に繊維のリサイクルに着目されたのでしょうか?

起業した当初、消費者に「一番、リサイクルしたいごみは何ですか?」と調査をしたことがありました。すると、「繊維・衣料品」という回答が一番多かったんです。

もうひとつの理由は繊維のゴミの多さです。日本では年間、衣類だけで約100万トン、カーテンなどを入れると約200万トンが廃棄されています。家電リサイクル法で処分されている大型家電が年間約60万トンですから、その3倍にもなります。

── 衣類は流行があるので、まだ着られる状態でも捨てられることが多そうですね。

繊維をリサイクルするための技術は、無かったわけではありませんが広く浸透はしていませんでした。しかし、2006年に私が偶然「トウモロコシの繊維からバイオエタノールができる」という記事を見て、「衣類の繊維からもバイオエタノールが作れるのでは」と思ったんです。

そこで当時、異業種交流会で知り合った東京大学の大学院生だった髙尾(髙尾正樹社長)と共に、翌年日本環境設計を設立して、コットン(綿)からバイオエタノールをつくる技術を商業化しました。そのバイオエタノールを作る技術を活かして、今年4月に国内初の国産バイオジェット燃料をつくったことを共同で開発したJALさんやグリーン・アース・インスティテュートさんと発表しました。つくったバイオジェット燃料は、JALの定期便への搭載が検討されています。

── いらなくなった服で、飛行機が飛ぶんですね!

そうなんです。次に開発したのが使用済み携帯電話を熱分解する技術です。プラスチック部分から再生油を製造し、内部の金属率を高めます。

2010年から世界最大規模の携帯電話に特化したリサイクル施設を動かしています。東京五輪の金・銀・銅メダルは都市鉱山と言われる使い終えた携帯電話から取り出した貴重金属で作られています。ここでリサイクルしたものも市場に流通しています。

── 日本環境設計さんの技術だとは知りませんでした。

2015年には、衣類などの化学繊維のポリエステルを分解して、石油由来と同じ品質のペレット(ポリエステルの原料)をつくる技術が完成しました。ポリエステル100%の服であれば技術的には、一着の服からほぼ一着の服を作ることができます。まだまだ課題はありますが、製品から製品へ変換できるので、新しく採掘した石油を原料として使うことがありません。

── 今までリサイクルの取材をしてきて、製品から製品へのリサイクルがいかに難しいかというお話を聞いてきたのですが、御社の技術でそれが可能になったんですね。

私たちの技術ではポリエステルを分子レベルで分解し、不純物を取り除いてから再びつなぎ合わせています。この化学プロセスを経ると物質を劣化させることなく不純物を取り除くことができるため、何度でも製品を作ることができますし、製品から原料に戻し、また製品を作るという循環を繰り返し実現することが可能です。

今までのリサイクルは、対象物を洗浄して形状を変えて再生する手法でした。もともと不純物が少ないことが重要視され、不純物が多いとリサイクルできません。

一例として、日本では、回収したペットボトルのうちペットボトルとしてリサイクルされているのは1割程度で、大部分は「サーマルリサイクル」として焼却による熱回収や海外へ輸出されていました。このやり方は、国際的に言えばリサイクルとは認められなくなっていますし、私どもとしても認めさせないようにしたいんです。

── 資源を循環させる技術があれば、新たな石油を採掘しなくてもよくなりますね。

石油などは「地下資源」といわれますが、私たちは役目を終えて使わなくなった製品を「地上資源」と呼んでいます。地上資源を循環させて半永久的に使いたい。そのために、川崎にある世界最大のペットボトルのケミカル工場を持つ企業をM&Aしました。ここでは2万2千トンのポリエステルの処理が可能で、2021年夏の稼働を予定しています。

"リサイクルに興味のない95%"を巻き込む方法

── リサイクルのための回収はどうされているのでしょうか?

消費者に「どこで回収してほしいですか?」と聞くと「お店」です。商品を購入されたお店の店頭に回収ボックスを設置しています。

── 消費者の行動範囲で無理なくリサイクルに参加できるのがすごいと思います。

弊社ではリサイクルの回収から再生、流通、販売までを回す仕組みを「BRING」と名付けてブランディングしています。自社のアパレルブランドの他、良品計画やスノーピーク、アダストリアや大丸・松坂屋など、国内の多くの大手企業に参加してもらっています

自社ブランドのBRINGの服には回収キットを付けて、不要な服を入れてポスティングしてもらうと工場へ届くようになっています。ひとつ買うと、ひとつリサイクルする「one buy one Recycle」の関係を作りたかったんです

服の回収箱

── いろんなお店に同じ回収ボックスが置いてあると、消費者にとっても、わかりやすいですね。

企業がそれぞれ独自のやり方でリサイクルをしていたら、消費者にとってはわかりにくく不便だし、リサイクルが続かないですよね。だから統一化して多くの企業に「BRING」に参加していただくことがとても重要なんです。

また、消費者にリサイクルを「自分ごと」として捉えてもらえるよう、多くの人が参加したくなるような楽しいプロジェクトの企画もサポートしてきました。その一つが2018年からマクドナルドが実施している遊ばなくなったハッピーセットのプラスチックおもちゃをマクドナルド店舗で回収する「おもちゃのリサイクル」です。

── 私も見かけたことがあるのですが、マクドナルドのイベントは子どもたちが喜んで参加していますね。

子どもたちの間で「使わなくなったハッピーセットのおもちゃはリサイクルする」という文化ができつつあるんです。2019年度はお子様の長期休暇に合わせて年3回実施して、約340万点のおもちゃが集まり、お店のトレーにリサイクルしています。

── 2015年に開催された、衣類から作ったジェット燃料で映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する、デロリアンを走らせるイベントも大きな話題になりました。

「リサイクルに参加してください」と言うだけでは参加してもらえないけれど、「いらない衣服を持ってくると、デロリアンに乗って写真が撮れます」というと、1時間待ちでも大勢の人が集まってくれるんです。イベントに参加してもらうことでリサイクルの回収動線ができ、環境問題に気づくきっかけにもなります。

95%の人はリサイクルに関心があっても行動するとなると難しい部分もあると思います。「環境は大切だからリサイクルをしよう」という「正しい」話よりも、「楽しい」話の方が人は興味を持ちます。たくさんの人に参加してもらうためには「楽しい」をキーワードに企画を続けることが大切なんです。

最初は誰も信じなかった

── 日本環境設計の最大の特徴は、BRINGという「リサイクルの仕組み」を構築されことだと思います。「リサイクルのプラットフォームを提供する」というビジネスモデルに至ったのはなぜなのでしょうか?

これまで様々な環境への取り組みがありましたけど、どれも生活者からは距離があると思っていました。私はもともと繊維会社に勤めていたのですが、生活者が参加できるような、経済と環境を両立した循環型社会を作るためには、繊維だけではなくもっと広い範囲で動く必要があります。

「技術、消費者の行動(回収)、小売、メーカー」、そのそれぞれをつないで回していく「ハブ」となるような会社を作りたかったんです。

── その仕組みを実現するために、どこからアプローチされたのでしょうか?

特に重要なのは、消費者と回収拠点、小売です。消費者は、環境に配慮した商品Aとそうではない商品Bがあったら、Aを買いたいと思うはずです。そして環境に配慮した商品が売れるとサプライチェーンが変わり、環境にいい商品の製造量が増えます。生産効率が上がるので価格を下げられるし、作り続けることで品質が高くなっていく。この循環を作ることが大切なんです。

── 最初の頃は、企業に参入してもらうのは大変だったのでは?

始めた頃は技術はあっても事例がまだなかったので「そんな技術聞いたことがない、ベンチャーにできるわけがない」と誰も信じてくれませんでした。人脈もなかったので、とにかく足を使って企業を訪問して、口説き落とすしかありませんでした。

── 最初に手応えを感じたのはいつだったのでしょうか?

最初に、良品計画さんが協力してくださったことで状況が大きく変わりました。そこから小売店の店頭で衣料品を回収するモデルができていったんです。その過程で、店頭に回収ボックスを置くと、集客や売り上げアップにプラスの効果があることもわかりました。「無印良品さんが導入しています」と事例を示すと、他社にも少しずつ話を聞いてもらえるようになりました。

それからプラスチック製品の回収では流通大手のイオングループとセブン&アイグループが導入してくださったことも大きかったですね。小売の消費者の窓口としては最大手ですから。

── 消費者にとって、リサイクルがグッと身近になりますね。

重要なのは「大手が同時に」ということなんです。「競合のA社が導入するならうちはしない」というのはよくある話ですが、私たちはひとつの企業のためにやっているんじゃない、地球のためにやってるんです

リサイクルは社会のインフラですから、みんなで協力しないとできません。「うちは〇〇系列だから」ではなく、地球系であることが大切です(笑)

── かっこいいですね! 岩元さんはなぜそこまで信念を貫けるのでしょうか?

元は120万円で作った会社だし、失うものはないですから。潰れたとしても100万円を失って、うちのオカーチャンに怒られるだけ(笑)。

── そういう岩元さんだからこそ、多くの人を巻き込めるのだと思います。日本環境設計はリサイクルインフラ事業で国内トップに立っていますが、競合はあるのでしょうか?

うちにはない素晴らしい技術を持っている会社はたくさんあります。でも競合という見方ではなく仲間として考えます。循環型社会は一社じゃ絶対にできません、企業も国も連携が大切なんです。

環境に配慮しない企業は生き残れない

── 今後はどのようにBRINGを広げていく想定でしょうか。

海外で広げていくために、エネルギー分野において世界最多規模のライセンス数を持つフランスのAxensと提携しました。海外で「日本環境設計です」といっても相手にされませんので、世界で実績のある企業と組むことが大切なんです。これで世界中に技術を拡大する準備ができました。日本のいい事例を見て、海外の企業や研究機関が納得してくれたので、今年やっとスタートを切れそうです。

── ここ数年、SDGsや海洋プラスチック問題などの認知が高まっています。岩元さんもその追い風を感じますか?

これからの時代は、環境に配慮する会社がより評価されると思います。最近、カリフォルニアの大手電力会社が大規模な山火事の責任を問われ、その賠償金によって経営破綻しました。フランスでは衣料品を含む売れ残りの廃棄は法律によってできなくなります。

「2030年がSDGsのゴール」とされていますから、メーカー各社が持続可能な事業にどんどん投資して本気になっていると感じます。これからの10年間をどう歩むかが大事だと思います。

── 岩元さんの今後の展望を教えてください。

経済と環境と平和は両立できると思っています。戦争の原因の多くは、石油などの地下資源に関する利権の奪い合いです。BRINGが世界に広まれば、地上資源からポリエステルや燃料が作れるので、戦争をする必要はなくなります。戦争やテロがなくなると、平和になって、世界中の子どもたちが笑顔になるでしょう。

昔から循環型社会が提唱されてきましたが、具体例がありませんでした。理想論や試算ではなく、行動と投資が大切なんです。

解決の糸口になるのは、技術、企業の連携、人や物を集める仕組み作り、そしてみんなの気持ちを変えること。それを説得して回っています。一つひとつの「できる」をつなげることで、また新たなソリューションが生まれると信じています。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、海のイマを知ってもらうことが、海の豊かさを守ることにつながります。

  • facebookでシェアする
  • twitterでツイートする
  • LINEで送る
  • はてなブックマークに追加
  • Feedlyに登録する
  • noteに書く

海の関連ニュース

ABOUT US

Gyoppy! は、ひとりでも多くの人に、海と海にまつわる人、もの、ことに興味を持ってもらうこと、海の課題に関心を持ち、解決へのアクションを起こしてもらうことで、海の豊かさを次世代へつなぐことを目指します。

TOP