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「本当の歌詞に聞こえる!」替え歌で魚の面白さを伝える、さかな芸人

Gyoppy! 編集部

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♪タ~ラ、アマダイ、サケ ♪トド、ニベ、ホシエイ ♪ヒラメ、コイ、モウカ

魚の名前をつなげているだけなのに、なぜか本物の歌詞にリンクしてしまう驚きの「魚替え歌」。

「目を瞑って聞くと本当の歌詞に聞こえる!」
「絵上手い、歌詞上手い、歌詞違和感なし」
「想像以上に完成度高い」

と、YouTubeで大人気なのです(ちなみに上の歌詞はモンゴル800の「小さな恋のうた」)。

動画の中で、魚のイラストを描いたスケッチブックをテンポよくめくりながら、のびのびとした歌声を披露しているのが、さかな芸人ハットリさん。大手事務所には所属せず個人事務所を立ち上げ活動していて、この魚替え歌だけでなく「1ヶ月間釣った魚しか食べないチャレンジ」など体を張った魚企画を行っています。

Gyoppy! 編集部は以前から彼の存在が気になっていました。

さかな芸人って一体何者!?

そこで、普段は全国あちこちを忙しく飛び回っているハットリさんにリモート取材を実施! コロナウイルスによる自粛期間で家にいる時間をキャッチすることができました。

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頭に乗せている魚はウスメバル、だそう

「魚って『命をいただく』大切さを一番身近に感じられる動物なんです」

ハットリさんは、魚離れしている人々に対し、笑いを通して魚を知ってもらい、もっと食べてもらいたいと語ります。言葉の端々にハットリさんの魚への愛と懐の深さが垣間見えました。

この記事のあらすじ

  • 魚替え歌などの魚ネタを武器に、全国の漁港イベントを駆け回る日々
  • 将来の夢は「ブラックバスを釣って食べる」釣り堀をつくること
  • 魚は子ども達に「命をいただく」ことを教えられる一番身近な動物

芸人として行き詰まったとき、宴会芸だった「魚替え歌」がウケた

── ハットリさんは「さかな芸人」ということですが、そもそもどうして魚なんですか!?

祖父母の家が山梨にあって、父親によく渓流釣りに連れて行ってもらっていたんです。小さい頃から魚や虫、恐竜などの生き物が大好きで、よく図鑑を眺めている子供だったんですけど......なんで魚なのかと言われたら、その経験が一番大きいかもしれないですね。

── 芸人になったきっかけは?

ずっと将来は芸人になりたいって思っていたんです。高校生のときからモノマネとか一発芸とか素人ノリでやっていて、文化祭のステージにもひとりで出たり、それが楽しくて。大学に入ってからは、スキューバダイビングのライセンスをとって魚にますますのめりこんでいく一方で、早稲田大学のお笑いサークルに所属して、そこでもひとりコントをやっていました。

── それは魚に関係する内容で?

いえ、このときはまだ魚に関係ないコントとか一発ギャグで。大学卒業後に事務所に所属して芸人になったんですけど、全っっっ然ウケなくて。苦し紛れに、大学時代に飲み会でやってた魚替え歌を舞台でやってみたら、そっちのほうが好評だったんです。

── 魚替え歌! 今YouTubeで発信されているスケッチブックを使うネタですね?

そうです。今一番YouTubeでも再生回数が多いモンゴル800さんの「小さな恋のうた」の魚替え歌も大学時代につくったネタなので、かれこれもう10年くらいやってますね。

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魚の名前で小さな恋のうた

── これを見ると、こんなうまいことハマる名前の魚がいるんだ!って感心しちゃいます。

母音ごとに魚の名前のリストをつくってるんです。たとえば「ああ」だったら「サバ」とか。すぐ出てくるようにしているので、比較的すぐに替え歌はつくれます。歌詞によく出てくる単語は決まってるので。たとえば「必ず」と「輝く」だったら「カママス」、「あなたに」だったら「アマダイ」。

── たしかにどれもJポップ頻出ワード(笑)!

この前、電車に乗ってたら「次は川崎~川崎~」っていうのが「カワハギ~」って聞こえちゃって。もう職業病ですね。

── 絶対音感みたい。

絶対ギョ感です。

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なんでも魚の名前に聞こえる特殊能力を体得

── 小さい頃から好きだった魚と、芸人になる夢がこの魚替え歌ネタで重なるんですね。

でも結局、事務所はネタに行き詰まって辞めてしまったんです。そこからは「まわりの芸人がやってないことをやろう」と思って、1ヶ月間の路上ライブ、1ヶ月ひたすら北に歩いたらどこに着くかとか、いろんな企画をブログで配信していました。

で、そのシリーズの4つ目にやったのが「1ヶ月間釣った魚しか食べないチャレンジ」です。その途中で尊敬しているさかなクンさんにご挨拶できる機会があって、その後から頭に魚を乗せて正式に「さかな芸人」を名乗るようになりました。

事務所には所属せず、全国の漁港から直接オファーをもらって活動

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── さかな芸人として普段はどんなお仕事をしているんですか?

メインのお仕事としてはイベントに呼んでもらうことが多いです。全国各地の漁港のお祭りに呼んでもらってネタを披露したり、子どもたちに魚のイラストを描いてプレゼントしたり、魚クイズをしたり。

── 魚クイズ?

やってみましょうか。ここに4つの魚の名前が並んでいますが、1つだけが本当にいる魚の名前です。どれでしょう?

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あなたはどれが正解かわかりますか?

正解は2のウッカリカサゴです。

── こんな冗談みたいな名前の魚がいるとは!

面白い名前の魚がいっぱいいますよ。替え歌もそうですけど、ネタを通して「この魚の名前を初めて知りました」って言ってもらえるのがうれしくて。日本は島国なので、魚って日本各地どこにでもいるじゃないですか。だからいろんなところから呼んでもらえるのがありがたいです。今は直接のつながりでお仕事をいただけるからこそ、事務所に所属するよりも個人で活動しているほうが動きやすくもあります

ブラックバスも釣ったら食べて、受け入れられる世界に

── 企画は全て自分で考えているんですか?

そうですね。やりたいことがいっぱいあるんです。本当なら今年の秋には海外に行って「1ヶ月間釣った魚しか食べないin アマゾン」をやりたいなと思ってたんですけど。あとは船舶免許を取って、船で日本一周しながら釣った魚だけ食べるとか、釣った魚と物々交換しながら暮らすとか。

── 現代のわらしべ長者だ! 面白そう!

あとは、ブラックバスを釣って食べる「食べれる釣り堀」をやりたいんです。

── ブラックバスを食べる!? どういうことですか。

ブラックバスって釣り人には人気の魚だけど、外来種で自然の生態系を乱すので駆除の対象になっている地域もあるんです。それはわかるけど、バス釣りというのはひとつの産業にもなっているのでやみくもに駆除をするのも難しい。いずれは隔離したエリアだけで釣る魚として管理するべきだなと思っているんです。

ただ、これも今すぐには難しい状況*1なので、まずは釣った人がブラックバスを食べて、食べる魚として浸透していくといいなと。釣りの基本はキャッチ・アンド・リリースですが、ブラックバスに関してはリリース禁止のところもあります。だから、僕はブラックバスを釣って食べることをブログで勧めているんです。

(*1=外来生物法によって、許可なく移動、飼育することができない)

── ぶっちゃけ、味はどうなんですか?

水がきれいだったらおいしいです。白身で肉厚なので揚げ物に向いてますし、調理法を選ばない魚ですね。

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ハットリさん作・ブラックバス料理。左からムニエル、チャンジャ、煮付け。

── ハットリさん、お料理も上手!

プロレベルというわけではありませんが、居酒屋でバイトをしていたので。魚をいただく機会も多いので結構家で捌いたりもします。ぜひ釣り人のみなさんにも、ブラックバスを持ち帰って*2捌いてほしいです。

(*2=生きたまま持ち帰るのは違法なので、持ち帰る場合は必ず現地で締めてから)

ちなみに、ニジマスも外来種なんですけど、そちらは食用としての印象が強いので悪く思われにくい。ブラックバスは在来魚を食べ荒らし生態系を乱してしまう側面があるので、メディアにも悪者にされて心苦しいんです。いただきますの精神で、ブラックバスも食べる魚になったらいいなと思っています。

── さかな芸人は魚に平等だ。

ははは! 釣り人が「こんなの食べれないよ」って投げちゃうような魚も、よく見てみればヒレがきれいだったり魅力がある。魚は市場で値段がつくものなのでどうしても高い魚と安い魚があって、安い魚は雑魚なんて呼ばれたりしますよね。でも、1匹1匹に目を向けてみると面白い部分もたくさんあるんです。外来種も蔑まれることがなくなるように、暑苦しくなく堅苦しくなく、すべての魚の魅力をコミカルに伝えていけたらと思います。

── そこはやっぱり楽しく伝えていきたいなって気持ちなんですね。

笑いとして楽しんでもらうほうが受け入れてもらいやすいと思います。さかなクンさんを見てて、それはすごく感じるんですよね。さかなクンさんの背中......いや、背びれを追いかけていきたいです。

水族館みたいな存在になりたい

── ハットリさんが活動していて、一番うれしいのはどんなときですか?

やっぱりお子さんが喜んでくれる瞬間です。魚好きの子ってなぜかちょっとシャイな男の子が多くて、それが自分の小さい頃に似ています。今の自分は子どもの頃の自分が喜ぶネタをできてるんだと思うとうれしいです。

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海洋大学の学園祭にて。親子連れのお客さんが多い

── 今の子どもは魚を食べる機会が減ってどんどん魚離れしているって話をよく聞きますが、ハットリさんは日本中をまわってみて、何か課題に感じることってありましたか?

とっつきにくいかもしれないですね、魚は。捌けないから敬遠している方が多いと思います。でも釣りをしてみると、釣って捌いて食べるところまでがワンセットになっていて、命をいただくというのが実感しやすいんです。だって同じことを鶏でやるよりもハードルが低いでしょう?

── たしかに、鶏や豚では無理です......。

「命をいただきます」という体験を一番身近なところで感じられるのが魚という生き物だと思うんです。自分にできることはいただきますの意味を伝えること。魚は食育の面で可能性がある食材だと思うので、そういう面を発信していかないといけないなと思いますね。

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ホシザメのカルパッチョ。まるでレストランのよう......

── さっきのブラックバスの話もそうですが、ハットリさんって「食べること」にもすごく重きを置いているんですね。

魚を知るには、食べないといけないと思うんです。たとえば、分類上はちがう魚でも、食べる餌が近いと身も似てくる。食べてわかる発見もあるというか。自分で捌いて胃袋や内臓を見ることでわかる特性もありますし。

まぐろ解体ショーってよくありますけど、解体がショーとして成立する動物って、唯一魚だけだと思うんですよ。魚だけが頭をつけたまま食卓に乗るじゃないですか、煮付けにしろ塩焼きにしろ。イカとかもそうですけど、海産物だけが頭が食卓にあっても成立する。

── たしかに。言われて気がつきました。

そこが魚の不思議で面白いところだと思うんです。生き物でありながら、日本人にとって食材という意味合いが強いところが。

── そう考えると現代の私たちが魚から離れてきているのは残念ですよね。もっと魚を身近に感じるためにはどうしたらいいんでしょう。

せっかくまわりにこれだけ海や川があるんだから、魚と出会える場所に、もっとレジャーとして足を運んでほしいなと思いますね。

そのためにも、僕は水族館みたいな存在になりたいんです。ふらりと行った水族館で面白い魚に出会って興味を持つことがあるように、僕のネタで魚と出会うきっかけづくりができたら。僕は釣りもするし、料理もするけどどちらもプロではない。でも広く浅くいろんなことを知ってネタをつくって見てもらうことで、「そんな魚がいるんだ~」って興味を持ってもらえたらうれしいですね。

おわりに

生き物でありながら、食材。

島国に住む日本人にとって魚という生き物は、唯一無二の立ち位置にある動物だということに気づかされ、思わずハッとしました。

スーパーに並ぶ魚はきれいに切られ、大抵がいつも似たような顔ぶれですが、ハットリさんは、普段はなかなか見ないような魚(たとえば上の写真にあるホシザメなど)も自分で捌いて食べてみて、そのおいしさを伝えています。

そこには「どんな魚にも価値があり、面白い」という魚への深い愛を感じました。

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船の上でのイベント

この記事でハットリさんに興味を持った方はぜひ、YouTubeを覗いてみてください。そこには、知らない魚の名前がたくさん出てくるはずです。

笑いの力で、魚に興味を持ってくれる人を増やし、海や川を訪れる人を増やし、そしていろんな魚が食べられる未来をつくる。

それこそが、すべての魚を愛するさかな芸人の想いなのです。さぁ、この想いよ届け。ほかのだれでもなく、アマダイ(あなたに)!

\ さっそくアクションしよう /

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