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このマークがついた魚なら大丈夫!「MSC/ASC」を知り尽くす7つの視点

Gyoppy!編集部

MSCの鈴木允さんとASCジャパンの山本光治さん

スーパーマーケットの鮮魚コーナーで「MSC」「ASC」といったマークの付いた商品を目にしたことがあるだろうか。今後確実に増えていくと見込まれるMSC/ASCの商品。一体どんな意味があるのだろう。

「MSC/ASC」を知り尽くす7つの視点!

一般的にはまだまだよく知られているわけではないこれらの認証。上記7つの視点で、MSC(海洋管理協議会)の鈴木允(すずき・まこと)さん、ASC(水産養殖管理協議会)ジャパンの山本光治(やまもと・こうじ)さんにお話を聞いた。

MSCラベル

(1)MSC/ASCの概要

MSC(海洋管理協議会)・鈴木さん
MSC(海洋管理協議会)・鈴木さん
鈴木
そもそもMSCとは、私が所属する国際的な非営利団体・海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の略称です。ミッションは、漁業における水産資源減少問題を解決していくこと。具体的な活動のひとつが「MSCラベル」です。

MSCラベルとは「海のエコラベル」とも呼ばれ、水産資源や生態系に配慮した漁業による水産物の証です。対象となるのは、天然の水産物のみ。厳正な環境規格をクリアした漁業で獲られた水産物にのみ与えられます。

世界に目を向けると、MSCラベルがついた商品は約100カ国、30,000品目以上が販売されています。特にMSCラベル商品先進国である欧米では、大手小売企業のウォルマートなどで取り扱う水産物のすべてをMSCなどの認証を受けた漁業から調達していくと発表しているんです。

日本でも、2006年よりイオンをはじめとした日本生協連でMSCラベル商品の販売を開始。2018年8月の時点で商品数は500品目を超えるなど、日本での市場も拡大しています。
ASC(水産養殖管理協議会)・山本さん
ASC(水産養殖管理協議会)・山本さん
山本
ASCは、私が所属する国際非営利団体・水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)の略称。ミッションは海をはじめとする環境や地域社会に配慮した責任ある養殖とそれによって生産された水産物を対象とする認証制度の運営です。具体的な活動が「ASCマーク」の普及です。

ASCマークも、MSCと意味合いが似ており、環境や社会に配慮した養殖場で生産された持続可能な水産物の証です。MSCと異なり、対象となるのは養殖の水産物。具体的には、2018年10月時点で、サケ、ブリ・スギ類、タイ・スズキ類、淡水マス、ティラピア、パンガシウス、カキ・ホタテ・アサリ・ムール貝などの二枚貝、アワビ、エビ、海藻の10魚種です。

2018年10月の時点で、世界70カ国、1万4,000品目を超える商品が登録されています。

(2)MSC/ASCマーク付き商品のメリットとは?

MSCラベルのついた商品
MSCラベルのついた商品
鈴木
対生産者のメリットですと、ブランド価値の向上、宣伝効果、新たな顧客獲得、原料の安定的な調達などが考えられます。このあたりは、ASCと共通している点かもしれません。
山本
消費者のメリットとしては、同じ水産物だとしてもMSC/ASCマークの商品を購入することで、安心かつ次の世代にも水産資源を残していけるという点ですね。MSC/ASCマークの商品は、加工・流通の経路が明確で、海の未来を守る漁業と養殖業からの水産物であるので。
鈴木
「未来や次世代につなげていく」と聞くと人ごとのように思えるかもしれませんが、海の魚の絶滅は身近なところでも起きています。たとえば、東京湾のアオギス。昔、「脚立釣り」といって、浅瀬に立てた脚立に腰をかけながらアオギスを釣るという漁法があったんです。しかし、ここ最近東京湾のアオギスは絶滅したと言われていて、脚立で釣る人もいなくなりました。意識して守っていかないと、いつのまにか魚と漁業が消えているという例はたくさんあります。
インタビューを受ける鈴木さんと山本さん

(3)MSC/ASC誕生の経緯

鈴木
MSCが制定されたのが、1997年。発端となったのは、世界三大漁場のひとつであるカナダ東海岸のグランバンクスの資源枯渇です。

大航海時代の前にバイキングたちがわざわざ大西洋を渡ってタラを獲りに行っていたほどの歴史ある漁場なんですが、1960年~1970年に漁獲技術の向上による乱獲によって資源が枯渇してしまった。

1992年にカナダ政府が全面禁漁をおこなった結果、食卓からフィッシュアンドチップスやソテーといった白身魚の料理が消え、3万~4万人ほどの漁師が廃業の目に遭ってしまったそうです。水産資源の枯渇が消費者の生活に響いてパニックにつながったのは、おそらく欧米の歴史上初めてのこと。同じ悲劇を繰り返さないために、単に漁獲量を規制するだけではなく、消費者が持続可能な水産物を選ぶ仕組みをつくるための議論がおこなわれました

そこで参考にしたのが、1993年に制定された「FSC(Forest Stewardship Council)」という森林管理の認証です。「先進国が何気なく使っている木材や紙が、実は熱帯雨林やマングローブを破壊している」「この反省を踏まえ、持続可能な森で採れた木材にFSCのラベルを貼りましょう」という動きがある程度成功したため、水産物にも応用しました。

持続可能な漁業に対して認証を出して、MSCのラベルをつけて流通させる。そして消費者がMSCラベルのついた商品を優先的に選び、マーケットの力で漁業を持続可能なものへと転換していこうという発想です。
MSC誕生の経緯を説明する鈴木さん
山本
ASC誕生のきっかけは2つあります。

1つは環境面ですね。エビ養殖の例では1970年代~1990年代にかけて養殖物の水産量は急激に増加しました。特に、タイ、フィリピン、インドネシアといった途上国ではエビの養殖がさかんであったのですが、当時はマングローブの森を切り開いて、エビの養殖場をつくっていました。

実際はマングローブの森がエビの養殖に長期間適さないので、数年すればすぐに土が悪くなってしまうんです。ですから、ものすごく手を入れてメンテナンスするか、もしくは次のところへ移って伐採して......を、繰り返す環境破壊が起こってしまった。

マングローブは「海のゆりかご」と呼ばれるほど大切な場所です。伐採しつくされれば、海洋環境や海洋資源、生態系への影響は計り知れない。そこで、世界自然保護基金WWFが主体となって養殖がマングローブをはじめとする環境に与える負荷をコントロールするための議論が始まりました。それが、ASCの基準作りの始まりです。

もう1つは社会面です。特に途上国では、養殖場で強制労働や地域住民との問題が起きていました。そこで、養殖場での労働者の権利や地域との関係を保障する方法についても議論がなされました。
世界の天然漁業と養殖業による水産物生産量のグラフ
世界の天然漁業と養殖業による水産物生産量(FAO Fishstat)(引用元:ASCについて|WWFジャパン
山本
実は、今日では食用されている水産物の約半分が養殖物です。今後、人口が増えていって、途上国の所得が上がってきて、世の中全体が健康志向になって......というトレンドを考えると、魚はより多く食べられるようになると考えられます。しかし、天然物はこれ以上多くは漁獲できない状況。そこで、環境と社会に考慮し、持続可能な養殖業を次世代につなげるために、2010年に制定されました。
鈴木
MSCも労働問題を無視しているわけではないんです。基準のなかに労働問題について触れたものはありますし、もちろん今後も強化していくポイントだと捉えています。

(4)MSC/ASCの活動内容

活動内容を説明する鈴木さん
鈴木
MSCは世界20カ国以上に事務所を設置し、約100ヶ国で販売されています。

事業内容はいわゆるメーカーと似た側面を持っていて。メーカーに営業部門と製造部門があるように、MSCにも基準やガイドラインをつくっているポリシーチームとつくった基準を普及するアウトリーチチームがあります。

ポリシーチームのスタッフはほとんどが本部にいて、仕事はそのものずばり基準づくり。基準やガイドラインを数年に1回のペースで見直して、ブラッシュアップしています。アウトリーチチームは各国の事務所に在籍しているので、認証を受けたい漁業関係者の方たちに審査手順を説明したり、実際にMSCラベルの商品を販売している小売店の方と一緒にプロモーション活動をしたり......そんな仕事を手がけています。審査するのは別の審査機関です。

活動の原資は、ラベルの使用料ですね。ラベルにお金を払っていただいているというよりも、海を守りたい人たちの善意で成り立っているという認識です。ただ、それだけではまだ組織の運営には不十分なので、外部からの寄付金で補っている部分もあります。
活動内容を説明する山本さん
山本
ASCの拠点はMSCと比較するとまだまだ少ないですね。本部はオランダのユトレヒトにあり、その他マーケットや養殖の拠点国にASCスタッフがいます。イギリス、北欧、ヨーロッパ、中国、ベトナム、オーストラリア、ブラジル、北アメリカ、そして日本。

組織としては小さいですが、CoC認証や商品のデータベース管理など、MSCと共通のものを採用し委託しています。収益源はMSCと同様にラベルの使用料がメインですね。

(5)どうすればMSC/ASCマークが付けられる?

鈴木さんと山本さん
鈴木
製品にMSCマークが付けられるには、2つの条件があります。

1つ目は、漁業そのものが「MSC漁業認証」を取得すること。そのためには、MSCが科学者、NGO、漁業関係者、加工・小売関係者の代表と協議のうえで作成した「持続可能な漁業のための原則と基準」をクリアしていることが必要です。

具体的には「過剰な漁獲をおこなわないこと or 資源が枯渇した場合に回復を論証できる方法で漁業をおこなうこと」、「生態系や多様性、生産力を維持できる漁業であること」「地域や国際的なルールを尊重した管理システムを有すること」の3つです。さらにこの3つを28の業績評価指標でスコアをつけて審査します。

MSCラベルのための2つ目の条件は「CoC(Chain of Custody)認証」を取得した企業が、流通から製造・加工、販売までの過程を管理していることです。CoC認証とは、加工・流通のフローのなかでMSC漁業認証を取得した漁業の水産物と、それ以外を確実に分別するための仕組み。

2つの条件をクリアすることで、初めてMSC「海のエコラベル」の付いた商品が店頭に並ぶのです。
MSCとの差異を説明する山本さん
山本
ASCマークに関しては、MSCと少し異なる点があります。

それは、審査基準が魚種によって異なる点。それぞれの基準で養殖場の審査がおこなわれます。審査基準の項目は多岐に及ぶのですが「養殖場海底の汚染指標」、「エサ原料となる天然魚の使用率」、「地域社会との関わり」などです。

加工・流通のフローでCoC認証がおこなわれる点は、MSCと同様。養殖場と加工・流通のフローの両方が審査をクリアすることで、ようやくASCマークが付けられるわけです。

(6)MSC/ASCの審査を受けたい漁業関係者はどうすればいい?

MSC/ASCのパンフレット
鈴木
まずはMSCなり、ASCなりにご連絡いただきたいと思います。ご連絡いただいたら、第三者の審査機関のリストをお渡しします。そのなかから見積もりをとっていただき、1社と契約する流れになります。

MSC漁業認証の審査機関は世界で10社認定されていて、日本での審査実績がある機関が3社あります。
山本
ASCも同様に、第三者の審査機関リストをお渡しします。ASCの養殖場認証とCoC認証については、日本の会社と日本に窓口がある海外の会社を合わせると8社あります。
鈴木
日本にMSCの審査機関をつくっていくのは今後の課題ですね。

一応お伝えしておきますと、海外の審査機関でも日本の審査員と契約しているので、審査するのは日本人です。本審査と予備審査(*1)のうち、任意の予備審査に関しては、日本人の審査員だけで手がけているケースも結構あります。
山本
ASCの審査費用は魚種や規模により様々ですが、相場は数百万円ぐらいですね。ただ、行政、NGO、販売先の企業からサポートを得た事例もあるので、そのあたりは遠慮なく相談いただきたいと思います。

*1)予備審査とは、本審査前に認定取得の可能性を見極めたり、本審査をクリアするための改善点を洗い出すための任意の審査。

(7)MSC/ASCのビジョン

鯖の缶詰に表示されたMSCラベル
鈴木
1997年に設立されてからの10年間、MSCの広がりは比較的スローだったんですよ。

2000年にオーストラリアのロブスター漁が認証されて、2008年に京都のアカガレイとズワイガニが認証されたのが日本初。その時点で認証された漁業の数は30ぐらいだったんですが、2018年12月には360くらいあるんですね。つまり、最初の10年で30しかなかった漁業認証が、次の10年で10倍になったということで。継続して普及活動をしていけば日本でも急に増えていく瞬間があると思っています。
山本
MSCもASCも同じだと思うんですが、認証ってひとつのツールなんですよね。「海洋資源管理」や「養殖場による負荷軽減」と声高に叫んだところで、現場の人たちがなんらかのカタチで評価されないとモチベーションは上がらない。そういう意味でも認証は大きな役割を果たしていると思います。
MSC認証のパンフレットを読む姿
鈴木
個人的には、店頭に並ぶ日本の魚すべてにMSCラベルがつくようになったら、僕らの役割は終わりだと思います。正直まだまだ先は長い。ほとんどの漁業が低水準な水産資源に依存していて、消費者も手に取った魚について、誰がどういう方法で獲ったのかがわからない状況。判断基準は値段だけといってもいいでしょう。

たとえば、キンキという魚は大きくなればキロ6,000円とかで売れるのに、スーパーには、網にかかった小さなものを1匹100円とかで売っている。そしてそれを買ってしまっている状況があるわけです。僕はそこを変えていきたい。やり方を変えれば、環境にも市場にもいい漁法になれることを見せたいと思っています。
山本
これまで社会活動という面で考えると、日本より海外のほうが活況な印象が強いと思います。でも、最近少しずつ風向きが変わってきていると思うんですよね。おいしさや値段に加えて、流通経路、養殖の場合はエサの種類などに関心を持つ消費者が増えてきた

シーフードの展示会などに出展しても、以前と比較して子ども連れのご家族に興味を持って話を聞いてもらえるようになったと思います。みなさん、関心はあるんですよ。でも、なかなか知る機会がない。だからこそ私たちが普及していかなければならないと思います。
笑顔の鈴木さんと山本さん

文/田中 嘉人
編集/くいしん
写真/藤原 慶

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