セリ見学に、生マグロの無人販売所! 那智勝浦でホンモノの美味しさに触れる
見学も可能な迫力のあるセリ
クロマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ。早朝、黒光りする巨大なマグロが所狭しと並ぶ。ここは和歌山県・那智勝浦の勝浦漁港。黒潮に囲まれた天然の良港として古くから栄えた場所だが、近年は全国の漁船が集まるマグロの集積地として知られる。水揚げ高だけでいえば静岡など他県の漁港の方が上だが、その多くは冷凍マグロだ。勝浦港がこだわるのは「生マグロ」で『紀州勝浦産生まぐろ』のブランドとして市場に出される。100%はえ縄(※)漁船による天然マグロは船上ですばやく活け締めされ冷水保存(氷温)することで、新鮮さを保ったまま港へと運ばれてくる。
※一本の長い縄に、たくさんの釣り針が付いた縄を漁場に設置して、まぐろが釣り針にかかるのを待つ漁法
生マグロの魅力はなんといっても「もっちり」とした食感にある。技術は進化しているが、マグロは一度冷凍させると内部の水分が氷になり解凍した際、どうしても風味や弾力が落ちてしまう。それに引き換え、生のマグロは噛みしめると、むちっとした歯ごたえと旨みが広がり、そのおいしさに感動するはずだ。
那智勝浦での生マグロの水揚げは通年あるが、最も多いのは12~5月前後。なかでも最高級品であり「本マグロ」「ヨコワ(幼魚)」と地元で呼ばれるクロマグロは、2~4月が旬。熟成させることで旨みが増し、そのおいしさは格別だ。2018年3月には、過去最大という450キロのクロマグロが水揚げされて、話題になっている。
市場でセリが行われるのは朝7時から、マグロが無くなるまで行われる。観光客でも見学可能だ。忙しく市場内を動き回りながらマグロを吟味する仲買人たち。入札は木札に書かれた数字で決まっていく。セリ落とされたマグロは次々に運ばれていき、鮮度を保ったまま市・県内のみならず全国へと出荷される。セリ見学以外にも、毎週日曜には朝市が開催され、生マグロはもちろん加工品、名産品などが即売され観光客に人気がある。
市内には無人マグロ販売所
マグロの街・那智勝浦ならではの光景。それが「マグロの無人販売」だ。人気の店のひとつが海産物問屋「中定商店」。入口のスライドドアを開けると中には冷蔵ケース。そこに、当日仕入れた生マグロの切り身がパックに入って並ぶ。料金は200円~で、地元プライスとはいえ鮮度抜群の生のマグロがこの値段とは驚く。セルフなので、横にあるボックスにお金を入れるシステム。割りばしやビニール袋なども用意されていて、さりげない心配りがうれしい。「中定商店」では生マグロのブロックや那智勝浦のもうひとつの名産品、伊勢海老の小売りもあるので、ぜひ利用したい。また、「中定商店」の生マグロや海鮮物を宿泊客に提供するのが、隣接した温泉旅館「かつうら御苑」。ここ以外にも、市内には生マグロを提供する食事処、居酒屋なども多い。生マグロのホンモノの美味しさに触れるなら、那智勝浦こそが行くべき場所だといえる。
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文・写真トラベルジャーナリスト寺田直子
那智勝浦 勝浦漁協