昼は魚を釣り、夜は女を釣る? 歌舞伎町元No.1ホストが、金より地位より「魚釣り」を選んだ理由

どーも! ライターの八木です。
私は今、茨城県潮来(いたこ)市にきています。

その理由はこの潮来駅から徒歩2分ほどの場所に、釣り屋で働いている元歌舞伎町No.1ホストがいるとの情報を聞きつけたからです。
昼間は魚を釣りあげ、そして夜は歌舞伎町で女を釣りあげていたという、生粋の釣り好き、寝ても覚めても釣り三昧、釣り業界のナポレオンと呼ばれる(多分私しか呼んでいません)「プリンス酒井」さんが潮来の釣り具屋にいるとのことなので、さっそく話を聞きにいってみました。


酒井さんが勤めているのは「潮来つり具センター」というお店。ここは釣り好きの間で超有名なお店なんだとか。
- 八木
- こんにちはー!

- 酒井
- あ、こんにちはー! わざわざ東京からありがとうございます。
- 八木
- (うわぁ、笑顔が爽やかな子犬系男子...! これは雨にぬれてたら連れて帰りたくなるタイプだ)
いえいえ! 私、潮来市ってはじめてきたんですけど、このお店は釣り好きの間で非常に有名だそうですね。 - 酒井
- そうなんですよ! 潮来つり具センターはプロ釣り師の村田基(むらたはじめ)さんという方がオーナーで、全国から村田さんのファンがやってくるくらい人気なんです。

- 八木
- 全国から! すごいですね。村田基さんって一体何者なんですか?
- 酒井
- 村田さんは釣りの世界記録を保持していたり、ルアーフィッシング界の先駆者的存在なんです。釣り漫画や釣りゲームにもキャラクターとして出演しています。
- 八木
- なるほどー! サッカー界でいうとキングカズのような存在ですかね?
- 酒井
- あ、そうです! そうです! 週末や年末年始などの連休には村田さんも店にいるので、ファンの人がよく会いにきますね。手を震わせながら握手を求める人もいます。ここはある種、釣り好きの聖地のような場所になっているのかもしれません。
- 八木
- そんなすごい場所が潮来にあったとは...!
ホストになった理由は?
- 八木
- 酒井さんはここで働く前、歌舞伎町No.1ホストだったという噂を聞いたのですが、とりあえず生まれてから歩んできた道のりについて聞いていいですか?
- 酒井
- はい(笑)。僕は福岡で生まれて、祖父と父が釣り好きで、3歳から釣りに連れて行ってもらっていました。なので釣り歴は30年くらいですね。
- 八木
- 「釣り歴30年」って聞くと職人系のおじいちゃんの姿が頭に浮かぶんですけど、酒井さんは全然違いますね。爽やか。子犬系イケメン。
- 酒井
- ありがとうございます(笑)。小さい頃は餌釣りをしてたんですけど、当時漫画に出ていた村田基さんの影響でルアーフィッシングにハマっちゃって。
小学校6年生からルアー釣りに目覚めて、それからずっと釣りが好きでしたね。で、専門学校を卒業した時に好きなことを仕事にしたいと思ったので、大阪の釣具屋に就職しました。 - 八木
- 一度は釣具屋に就職してるんですね。で、なぜそこからホストに...?
- 酒井
- 就職後も休みの日には国内を中心に釣りへ出掛けていて。でも日本各地のいろんな場所へ行くと、どうしてもお金がかかるんですよ。釣具屋さんは給料が高いとはいえないし、もっとお金を稼ぎたいなと思って...。そんな時にテレビでホストの世界の特集を見て、自分もやってみたいなと。

- 八木
- ああいうテレビの特集見ると、ちょっと興味湧いちゃいますよね。それで仕事を辞めて東京へ?
- 酒井
- いえ。せっかく入った会社だったので3年間勤めてみて、それでもホストがやりたかったら上京しようと思っていました。3年たった時、ホストは若いうちしかできないし、チャレンジしてみたいと思ったので、上京を決意しましたね。
- 八木
- はじめて東京へ行って、いきなり歌舞伎町ですか!? それ掛け算できないけど二次方程式を解こうとしてる感じじゃないですか?
- 酒井
- 今考えてみると、すごいなと思います(笑)。スーツケースひとつで歌舞伎町に行って、就職先のホストクラブの寮に入りました。
- 八木
- 漫画みたいな展開。
- 酒井
- そこから下積みをして、少しずつ稼げるようになっていき、店では当時最年少最速でNo.1になりました。
- 八木
- 漫画だ(笑)。
歌舞伎町元No.1は、どれくらい稼いでた?
- 八木
- なんかイージーな感じに聞こえますけど、大変なこととかなかったんですか?
- 酒井
- 大変なことも多いですよ!(笑)僕は23歳からホストを始めたんですけど、自分より年下の先輩もたくさんいました。ホストって、すごく縦社会なので売れないとお店にいられないんです。お客さんを呼べないとコンビニのバイトをやったほうが稼げますし...。
- 八木
- 全然イージーじゃなかったですね...! すいませんでした(笑)。ちなみにどんなお客さんが来るんですか? やっぱり女社長さんとか?
- 酒井
- 社長さんも来ますけど、一番多いのは主婦ですね。

- 八木
- え! 主婦! 意外すぎる...!
- 酒井
- そうですよね。でも女性はいつまでも女性でありたいので、旦那さんとうまくいってない主婦の人が多くなるのも理解できます。グチを聞いてくれる人がいないので、僕らはその欲求を満たすのが仕事って感じです。
- 八木
- ここだけの話、酒井さんは最高でどのくらい月収もらってたんですか?
- 酒井
- 最高月収は3桁後半です。誕生日月にはロマネ・コンティっていうお店で一番高いお酒を入れてもらいました。
- 八木
- ちなみにお値段は...?
- 酒井
- 1本300万円です! それから消費税とかテーブルチャージとか諸々あって、お客さんが払うのはだいたい400万円くらいですね。
- 八木
- 夜の世界すげぇ...。さすがNo.1。ちょっとえぐい表現しますけど、女の人を釣ることと魚を釣ることの共通点ってあるんですか?
- 酒井
- ありますね。ホストの世界でも釣りの経験は役に立ったと思います。例えば釣りだと、暑い日は水温が低いところに魚は行きたくなるので深いところに糸を垂らしてみるとか。そんな風に相手の気持ちを考えて、今どうして欲しいのかを感じとる感覚は女性に対応する時と似ている気がします。
他にも、釣りで養った忍耐力もホストの世界で役に立ちましたね。釣りって運も必要なので全然釣れないときもあるんです。水商売も同じで、調子が良いときもあれば悪いときもある。悪いときでも焦らずにグッとこらえて努力し続けることが成功へつながると釣りで学んでいたので、苦しい時期も頑張れたと思います。 - 八木
- 釣りのテクニックがホストでも役に立つなんて...!
ホストを辞めて、魚釣りの道を選んだ理由
- 八木
- でも順調だったホストの仕事をどうして辞めようと思ったんですか?
- 酒井
- 貯金が目標額までいったら辞めようと決めてたんです。お金を稼ぐのも大切ですけど、それよりも好きなことをして生活できたほうが幸せなんじゃないかって。
ホストは精神的に楽な仕事ではないので、休暇には息抜きに海外へ行ってて。その旅先で裕福じゃなくても仲良く幸せに暮らす家族の姿を見て、もちろんお金も大事ですけど、好きなこと(釣りの仕事)に戻ろうかなって思ったんですよね。 - 八木
- なるほど~。一周まわって悟った感じですね。たくさんの女性を虜にしてきた酒井さんをそこまで虜にする「釣りの魅力」ってどんなところなんですかね?
- 酒井
- 一番の魅力は魚を釣り上げた時の感動ですね。大きい魚を釣ると手が震えるんですよ。手が震える感動って日常じゃほとんど無いじゃないですか?
魚自体はスーパーとかで買って食べることもできるけど、釣り上げた時の感動はお金じゃ買えない。魚が大きければ大きいほど、珍しければ珍しいほど、その喜びは大きいんですよね。

- 酒井
- あとは海外へ行くようになって思ったのは、文化も言葉も価値観も違う外国人だろうと、同じボートに乗って釣りに行くと友達になれる。一人でもできるけど、みんなでもできるので、人とつながれるのも釣りならではの魅力です。
- 八木
- 確かに感動ってお金じゃ買えないですよね。みんな筋書きのないドラマ大好きですもんね。そんな酒井さんが今までの釣り人生で一番自慢したい出来事ってなんですか?
- 酒井
- フロリダのエバーグレーズっていう場所に行ってグランドスラムを達成したことですね。
- 八木
- ぐらんどすらむ??
- 酒井
- グランドスラムはIGFA(国際ゲームフィッシュ協会)という世界機構が定めたもので、1日の内に「ターポン」「ボーンフィッシュ」「パーミット」の3匹を釣ると達成となります。



- 酒井
- 僕は他の魚を狙いに行ったんですけど、たまたま2匹釣れて「あれ? あと1匹でグランドスラムじゃん!」ってなって(笑)。本当にラッキーでしたね。
- 八木
- なんですか、その棚からボタ餅的な偉業(笑)。
- 酒井
- ガイドしてくれた船長さんの腕もよかったんですよ! 船を止める場所とか、魚を見つけてくれるテクニックとか。やっぱり運も大事だなと思いましたね。
- 八木
- 釣りって運の要素が結構大きいんですか? 例えば私と酒井さんが同じ釣り道具で、よーいどんっ! ってやったら勝てる可能性あります?
- 酒井
- ありますよ! 上級者の人と初心者の人が一緒に行って上級者が教えているうちに初心者の方が先に釣れるなんてことも結構あります。それでみんなどんどんハマっていっちゃうんですよね(笑)。
- 八木
- 確かに。もし酒井さんにまぐれでも勝ったら「私もしかして才能あるんじゃない...?」って勘違いしちゃいますね。選ばれし子なんじゃないかと思っちゃう。
- 酒井
- そうやってみんなどんどんハマっていきます(笑)。
初心者が釣りをはじめるなら?
- 八木
- 私も釣りしたくなってきたなぁ。まず初心者は何から始めればいいですか?
- 酒井
- 一番手軽なのはニジマスですね。奥多摩や管理釣り場でよく釣れる魚です。塩焼きにして食べられるし、冬場でも釣れますね。
特に、女性は管理釣り場がいいと思います。釣り具のレンタルもあるし、トイレもあるし、レストランがあるところもあって足場も安定しているところが多いので。 - 八木
- 私、奥多摩でニジマス釣ったことあります! もうワンステップ上にいきたいんですけど...。
- 酒井
- それだと東京湾のスズキかなぁ。スズキも時期さえ間違えなければ比較的釣りやすいと思います。チャーター船が出てるので、それを予約して4~5時間くらい釣りができます。羽田空港が近いので飛行機が飛んでるのを見ながら釣りができるので結構楽しいと思います。
- 八木
- なるほど! 餌とルアーだとどっちがいいんですかね? そもそも違いってなんですか?
- 酒井
- ルアーの方が難易度は高いですね。ルアー好きは釣れなくてもルアーでやり続ける人が多いです。色を変えたり、種類を変えたり試行錯誤しながら。
- 八木
- 試行錯誤っていっても、こんだけ種類あったら迷っちゃうなぁ...。どんな考え方でルアーを変えていくんですか?

- 酒井
- その魚がよく食べているものを想像して、それに似たものを試してみるのは効果的だと思います。例えば霞ヶ浦だったらエビが多いので、エビっぽいルアーが良かったり、山中の湖の場合は木から落ちてくるセミを食べているので、セミっぽいルアーが良かったり。相手は魚なのでなかなか思い通りにはいかないですけど。
やっていくうちに経験がつくので、この地域ではこれで釣れたとか、お気に入りのルアーはこれ! とか。新しいルアーが出ると、つい試したくなるので永遠にハマってしまうんです。 - 八木
- 予想以上に深い釣りの世界...! 酒井さん個人としては、今後どういった活動をしていく予定ですか?
- 酒井
- 今後の目標は釣りの楽しさを、やったことのない人に広めていきたいと思っています。釣り人口をもっと増やして、子供たちにもやってもらいたいですね。
釣りっておじさんがやるものっていうイメージがまだ強いので、それを変えてもっともっと若い人にも広まるといいな。例えば若い人って趣味を選ぶときに音楽とかサーフィンとか、かっこいい、モテそうっていう考えで決める人が多いですよね。釣りもそんな選ばれ方をされるようにイメージを変えていきたいです。
終わりに

魚も女性も釣るのが上手な酒井さんは、相手の気持ちを考えられるとても爽やかな子犬系男子でした。
酒井さんが釣った怪しげな魚の標本や興味深いルアーなどを見ると、何かに夢中になった純粋な幼少期のワクワク感やキラキラした感覚がよみがえってきたような気がします。
お母さん、私は元気です。育ててくれてありがとう。
みんな違ってみんないい。だからこそ、みんなの好きよりも、自分の好きを大切にしよう。
そんな純粋なフレーズが心に浮かび上がってきた取材でした。
- 「潮来つり具センター」公式サイトhttp://www.lure.jp/
ライター/八木彩香