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プラごみは、なぜ海に流れ出るのか? 調査プロジェクト「アルバトロス」

BLUE SHIP

採取されたプラスチック片
小嶌不二夫(こじまふじお)さん

小嶌不二夫(こじまふじお) 株式会社ピリカ 代表取締役、一般社団法人ピリカ 代表理事

1987年、富山県生まれ。大阪府立大学卒、京都大学大学院在学中に世界を放浪。道中に訪れた全ての都市で大きな問題となっていたポイ捨てごみ問題の解決を目指し、2011年11月株式会社ピリカを創業。ピリカはアイヌ語で「美しい」を意味する。 世界最大規模のごみ拾いSNS「ピリカ」や、人工知能を使ったポイ捨て分布調査サービス「タカノメ」、水中浮遊ごみ調査装置「アルバトロス」を通じて、ごみの自然界流出問題の根本的な解決に取り組む。 2018年、一般財団法人日本そうじ協会主催「掃除大賞2018」において環境大臣賞を受賞。

小嶌さんは何をされていますか?

株式会社ピリカと一般社団法人ピリカの両方の代表をしています。組織を通じて、ごみ問題をはじめ、環境問題の解決に取り組んでいます。

海に浮かぶプラスチックゴミ

ピリカはどのような業務をしていますか?

ピリカは、人類が生み出した最も大きな課題である環境問題に、科学技術の力で解決することに取り組んでいます。環境問題というと、地球温暖化問題や水質の問題など、本当にたくさんの問題がありますが、ピリカが一番初めに取り組み始めたのはポイ捨てごみの問題です。

事業は大きく分けて3つあります。一つ目が、ポイ捨てごみに特化したSNSアプリ「ピリカ」。二つ目が、ごみの量を定量的に把握する「タカノメ」。そして、ごみ問題のなかでもプラスチックごみの海洋流出の解明に取り組む「アルバトロス」です。

アルバトロス
アルバトロス

環境大臣賞を受賞しましたね

はい。大変ありがたいことに、2018年の初めにいただくことができ、たくさんの方々にわれわれの活動を知っていただく機会を得ています。受賞した賞は、正式には一般財団法人 日本そうじ協会が主催する「掃除大賞2018」の「環境大臣賞」です。

受賞理由は、"ポイ捨てごみ"という環境問題を、AIやSNSなど現代の科学技術の力を取り入れたサービスやシステムを開発・提供することで"見える化"し、多くの人の共感と清掃活動への参加を促したこと。加えて、行政・自治体の施策改善にまで影響を与えた点を評価いただきました。
参照:【祝】ピリカが環境大臣賞を受賞しました!

プラスチックの海洋流出の問題に取り組んでいるのですよね。先日発表された「アルバトロス」プロジェクトの経緯を教えてください

2011年に会社を立ち上げたわれわれは、「科学技術の力で環境問題の解決に取り組む」ことをミッションに、これまで主にポイ捨てごみの問題に取り組んできました。世界最大級のごみ拾いSNS「ピリカ」などもその一環です。

ごみが海に流れ出てることは当初から分かっていましたが、ごみがなぜ海に流れ出てしまうのか? 流出の経路やどんな種類のごみが多いのかなど、問題があるのは分かるけど、なぜ起こるのか? どれくらいの大きさの問題なのか? など、分からないことが非常に多い状況からのスタートでした。調べてみても、世界中の科学者も答えをもっていない可能性が高い。

そこで、自分たちが「どこから何をやるべきなのか」明確にするために、下水処理場を見学したり、プラスチックごみに関するあらゆる勉強を始めたりしました。「川から海にどれくらい、どんなごみが流出しているのか調べてみよう」と、流出経路の問題に着眼し、川での調査を始めたのが今から2年くらい前のことです。

調査の様子
調査の様子

一般的に海上で調査されるケースが多いようなのですが、その手法は、漁業と同じような要領で船でひたすら網を引きまわし、網にたまったごみの量を調べる手法でした。「プラスチックごみが川から海へ流出している」という仮説が正しいのか? ということを調べたかったのですが、この手法だと、狭い川や流れのないところでは調査ができないので、どうやったらさまざまな場所でも調査ができるか考えました。

自分たちで実態を測ることができれば、プラスチックごみの海洋流出という大きな問題に対して、どこから解決すべきかという解を得られるかもしれない。川などでもプラスチックごみを採取できる調査の開発から、今度は採取したプラスチックごみを分析する手法......と、さまざまな手法を組み合わせて調査を進め、第一回目の報告をさせていただきました。

今回使った装置は「アルバトロス5号機」というそうですね

3分間装置を水中に沈めてごみを採取し、プラスチック浮遊量を調査する装置です。その際に水量も測るため、1リットルあたり水量を計算してどのくらいのごみが含まれているかわかるのです。

ヒモでつり下げるタイプの装置にしたことで、川・港湾・下水処理場など、いろいろな場所でこれまでできなかった調査ができました。これにより、どのようなルートでどんなプラスチックが漏れ出しているのか、検討をつけられるようになりました。

水中のアルバトロス
アルバトロスを水中から引き上げる様子

バッテリーは携帯にも使われているリチウムイオンバッテリーを使用しています。水面近くに沈めて調査時間は3分間としています。1日に何カ所も調査をするため、効率を考えて3分間としています。

採取した結果は?

採取したデータの分析結果をホームページで公表しています。われわれが一番にしたいことは、プラスチックごみの海洋流出の実態を明らかにすることです。流出するルートが判明すれば、例えば、川に浮遊しているごみが多いならば、流れ出ることがないようにその川の流域で清掃活動をしようとか、下水から流れ出ている可能性が分かればフィルターをかけるなど、問題を絞り込み、具体的な解決策が生まれてきます。

また、プラスチックも流れ出しやすい物、流れ出しにくい物があります。それなら、漏れ出しても環境負荷の少ない素材に変えることや、流れ出ないように工夫するなど、いろいろな対策を打てると思っています。

※より詳しい結果を自分の目で確かめたい方は下記リンクをご覧ください
アルバトロス関連オープンデータ

多くの場所で調べているんですね。場所、時間など決まりはあるんですか?

アルバトロスで回収したゴミ


万全を期すならば、海に近い河口部分では干潮満潮の時刻を考慮するなど、気をつけた方が良い事はあります。ただ、今回の報告では限られた期間と予算で多くの学びを得るために、あえて場所や時間を厳しく制限することはしませんでした。

われわれもそうですが、世界でも多くの学者が「調べてみる」にトライしている段階なのです。ただ、雨が降った後は水流が強く装置が流されてしまう可能性があるので、基本は穏やかな天気の良い日に調査を実施しています。

NYでも調査しているんですね?

はい、出張で米国のカンファレンスに出かけた際に、以前から一緒に活動をさせてもらっていたニューヨークのNPOと一緒に調べたものです。他の国でもやりたいので、関心を持ってくださる方がいればぜひお声がけいただきたいです。調査をしてみたところ、東京や大阪に比べて、ニューヨークの川にはあまりプラスチックが浮いていなかったんです。われわれ日本人の生活様式や都市の機能に何か問題があるのか? もっと調べてみたくなりました。
参照:【ピリカ、ニューヨークに行く】海外展開に向けた活動レポート2

調査の結果で見えてきたことはありますか?

まず、われわれが暮らす関東・関西エリアの川からプラスチックごみが流出しているという事実をつかむことができました。それも、河口部分だけでなく、もう少しさかのぼった川の上流からも。これまでは、「東京湾や日本近海に浮いている」というところまでしか分かっていなかったのです。

採取されたプラスチック片
採取されたプラスチック片

実は、この事実をつかんだことにより、プラスチックごみの海洋流出問題の解決に向けて、誰と協力をしてどんな対策をするか? 具体的に検討できるようになると考えています。

ごみ問題は、一人ひとりの生活と密接に関わりますが、回収・清掃・焼却などの対策の枠組みを決める主体は自治体や国など行政になります。海のごみ問題の場合、その海に面している自治体だけが対応を求められることが多かったのですが、川の上流からもごみが流出していることがデータで明らかになれば、上流域の自治体も当事者になります。この問題の当事者が増え、解決に向けて具体的な対策をともに打っていけるようになるかもしれないのです。

あと、ごみの種類についても調べています。最近、マイクロプラスチック関連では「レジ袋」や「ストロー」などが話題にされていますよね。調べてみると、もしかしたらそうだったかもしれない破片も混じっている。しかし、必ずしも多いとは断定できない状況です。

今回調査してつかめた事実はたくさんありますが、具体的な製品カテゴリーを特定できたものに「人口芝」がありました。なぜ流出してしまったのか? 調査はまだされていませんが、「人口芝」には野外で長期間使用され雨風にさらされているケースもあります。そのうちにすり減ってパキパキと折れてしまった破片が雨風に流され、そのまま川に流れてしまうこともあるかもしれません。

人工芝と推定されるプラスチック片
人工芝と推定されるプラスチック片

このように、今後調査を続けていくことで自然界に流出しやすいプラスチックが分かり、対策を検討できる状況を作っていきたいと考えています。

いつまでデータを蓄積していくのですか?

まずは調査範囲を広げていきたいと思っているので、まだ期限を切る段階にはありません。ポイ捨てごみSNS「ピリカ」など、他の事業を運営する中で分かっていることとして、集まるごみは地域に特性があるんです。

例えば、今回検出した「人工芝」も都市部以外では見つからないかもしれない。農業が盛んな地域はどうか? 漁業は? など、土地土地の特性が出てくる可能性が高い。今回発表した報告は、東京圏と大阪とニューヨークだけ。より問題解決に役立つデータを得るために、今後調査範囲を広げてゆく構想があります。

江ノ島の調査はしていないんですね?

そうですね。まだ調査していません。やりたいなとは思っています。しかし、結局は、誰が、どのような目的で予算を組み「プロジェクト」として成立させるのかが問題なのです。神奈川県だと川崎市で調査をしていますが、市議会議員の方がすごく環境活動に熱心に取り組んでいただけたので実現しました。

全国の自治体の方にメッセージはありますか?

採取されたプラスチックの大きさ。微細なものが多い
採取されたプラスチックの大きさ。微細なものが多い

自治体の場合、まず川・池・海にプラスチックが漂っている可能性があるので、その実態を把握していくことが大切だと思っています。

昨年のG7でも大きな話題になりましたが、国際的な注目度が急速に高まっており、日本政府の言及もありました。自治体も対策を打つ必要が出てくる可能性が高いので、早い段階で現状の把握をしていくことが大切だと考えています。

ヨーロッパなど諸外国ではすでに始まっていますが、企業は将来的に、一部のプラスチックの使用規制が行われてくると思います。問題が絞り込まれ、今後使えなくなる製品の代用品をいち早く作る機会を得れば、企業として大きなビジネスチャンスになってくると思います。

問題点、課題などはありますか?

プラスチックごみの問題は、一つの企業や自治体で取り組んでも解決できないという点です。予算という意味では自治体や一企業だけでは負担が大変ですし、何より協力関係を作らなければならない。われわれも、さまざまな企業や自治体を日々訪問し、どこから取り組もうかと相談を始めているところです。われわれの中の活動という意味でいうと、「アルバトロス」プロジェクト自体がとても手がかかります。

例えば、川で調査をした後、懸濁液(けんだくえき)と呼ぶ"プラスチックごみ"が入っているかもしれない水のボトルを持ち帰ります。この懸濁液からプラスチック片を取り出すのですが、一粒一粒ピンセットで手作業で選り分けます。貝殻や小石など、いろいろな物質が混じっている状態からプラスチック片らしきものを取り出すのは、とても根気のいる作業です。

一つひとつ、人の手で仕分け作業をする
一つひとつ、人の手で仕分け作業をする
海から引き上げたごみが、プラスチックかそうでないかを一つひとつ検証する
海から引き上げたごみが、プラスチックかそうでないかを一つひとつ検証する

続いて、プラスチック片らしきものだけを分析器に入れ、そこに光を当てます。得られた波形から、プラスチックかどうか、その種類はポリエチレンかポリプロピレンかなどを調べていくのですが、この作業も細かい粒を一つひとつ分析するものなので、気力も体力も使います。予算も圧迫するので大変ですね(笑)

プラスチック片を光に当てて、材質の特定
プラスチック片を光に当てて、材質の特定

マイクロプラスチック問題をブームに終わらせないためには?

マイクロプラスチック問題についてはさまざまな意見がありますが、温暖化と同じくらいに深刻な、地球的規模の課題であるという意見もあります。ちなみに、社会に関心を持ってもらうのは目的ではなく手段なので、誰も知らないところでひっそりと解決するのもカッコいいと思います。しかし、この問題の解決のために、「より多くの人に正しい事実を知ってもらうこと」はとても重要だと思います。

Googleの検索数で比較すると、温暖化とマイクロプラスチックの検索数が肉薄していることが分かります。環境問題として温暖化ほどのネームバリューを持っているニュースは他にないので、関心度合いで第2位につけるほどの問題となっていることがわかります。しかし、今後温暖化を超えるほど大きな問題となっていくかは分かりません。

採取されたプラスチック片

われわれとしては「科学技術の力で解決すること」を大切にしているので、明らかになった科学的に正しい事実を発信していくことを重視しています。この問題については、実態や影響を含め明らかになっていないことも多いので、社会として何が問題か、問題のどの部分に意識や労力、お金を割いていくべきかを見極めていくことが科学の大切な役割だと思っています。

海に出てしまったマイクロプラスチックは回収できますか?

網に引っかかるプラスチックを回収するのは物理的には不可能ではありません。ただ、プラスチックを回収する際に、主に使われているのはプランクトンネットという網で、その名の通りプランクトンも含めた海の生物も一緒に捕獲してしまいます。一度海に流出してしまったマイクロプラスチックを現実的に回収する方法は現代にはなく、排出される量を減らしてく事が現実的な対策となります。

例えば、2050年の未来から振りかえってみると、現時点で流出してしまったプラスチックの量より、これから流出する量の方がはるかに多いことになります。日本の人口は減少傾向にありますが、世界的には増えています。豊かさを求めればプラスチックの使用量も増え、それに従って流出する量も増えていく可能性もあります。だから回収に力を入れるより、出ていく量を抑制する方がより重要だと思います。

肥料カプセルと推定されるプラスチック片
肥料カプセルと推定されるプラスチック片

それがどんな方法かはまだ分かりませんが、例えば人工芝を作っている会社と一緒に解決策を考えたり、行政・自治体と組んでルール作りをしたりするなど、活用を模索していくことを考えています。

そもそも、なぜマイクロプラスチックに興味を持ったのでしょう?

正確には「プラスチックを含むごみ問題」に興味がありました。ごみのうち「木」や「紙」は海に浮遊し時間をかけて分解されます。プラスチックは残り続けるから問題が大きいのです。そして「マイクロ」に着目しているのは研究上の理由です。

例えば、川の上流から1分間に1本しかペットボトルが流れてこないと仮定しましょう。われわれが使用する網の大きさには限度があるので、ペットボトルが網に引っかかるかどうかは運試しのゲームになります。もし、ペットボトルが流れる量を、誤差の影響を排除して正確に調べたい場合は、広い網を長時間設置して調査を続ける必要があります。しかし、小さなプラスチック片は相対的に数が多いので、小さな網でも3分くらいの調査で、ある程度確からしい値が得られるのです。

汚染のひどい河川はありますか?

採取されてプラスチック片

今回調査を行った地点の中だと、多摩川より荒川の方がプラスチック片の検出量が多い結果となりました。加えて、川より港湾の方がプラスチック片が多い傾向でした。一概に決めつけられるものではありませんが、ある程度、河川によって傾向があることをつかんでいます。

"アルバトロス"はかわいい名前ですね

ありがとうございます! ピリカではプロジェクトごとに鳥の名前をつけることにしています。このプロジェクトの場合は、プラスチックごみ誤飲の犠牲になりやすい鳥として有名な"アルバトロス"(アホウドリ)に決めました。他にはポイ捨て観察カメラ「スパロウ」。ポイ捨て調査、分析の「タカノメ」などがあります。

われわれにできることは?(あなたの力が必要な理由)

プラスチックの海洋流出問題は、人間由来の問題です。プラスチックは便利な素材ですから、あらゆる製品に使われています。もはやプラスチックなしでは生活できないですよね。だから意図はしていなくとも、生活のなかで自然に流出させてしまっているかもしれない。今すぐできることとしては、まずはポイ捨てをしないこと。道ばたでごみを見つけたら拾ってみること。

仕事でプラスチック製品と密接に関わる方には、特にできることが多いと思います。石油を輸送する方、石油からプラスチックの元となる科学物質を作る科学メーカーの方、売り買いをする方、いろんな方の手を経て、プラスチック製品は一般の方の手元に届いています。

その過程に関わる方は、ぜひこの機会にプラスチックの使い方や性能を見直してみていただきたいです。面倒かもしれませんが、見方によってはマイクロプラスチックの問題は、新たな需要を生む大きなビジネスチャンスかもしれません。願わくは、われわれもこの問題の解決に関わっていきたいと思いますので、皆さん一緒に頑張って行きましょう。

方眼紙に並べられたプラスチック片

取材・写真/上重 泰秀(じょうじゅう やすひで)
http://jojucamera.com

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