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豊かな未来のきっかけを届ける

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「環境に悪いからダメだけでなく、逆の立場も考えたい」水中カメラマンの思い

BLUE SHIP

ミクロネシア
道城征央さん

道城征央 水中カメラマン

水中を中心に陸上まで撮るネイチャーフォトグラファー / フォトジャーナリスト。

主にミクロネシア連邦のジープ島、チューク州、ヤップ州、ポンペイ州、コスラエ州を撮影する。渡航歴は40回近くにのぼる。
2011年にはミクロネシア連邦4州の撮影を制覇。
国内では小笠原諸島で水中から陸上の自然などを地質学の見地から撮る。

ホームページ:http://www.ordinaryworld.jp/

道城さんは何をされていますか?

私は埼玉動物海洋専門学校で講師を務める傍ら、水中カメラマンとして活動しています。専門学校では、将来動物園の飼育員や水族館のドルフィントレーナーを目指す学生たちに「自然環境保全論」と「海洋環境学」の二つの講義を担当しています。また、授業では今まで撮りためた写真を教材に使い、生徒に教えています。

具体的にはどのような活動が多いですか?

以前はダイビング雑誌に水中写真を提供していましたが、現在は「人と自然との関わり方」を中心に、保育園・小中高大学・企業を対象として、全国で講演活動をしています。またトークライブ・セミナー・ワークショップを開催しています。

講演会の写真
講演会の写真

講演依頼が多くなった理由は、実は2011年東日本大震災がきっかけです。私が仕事で訪れる海外の多くはライフラインのない場所が多いです。東日本大震災で大変大きな被害を受けた3月以降、日本各地で食料や燃料不足に悩まされ、電車の間引き運転や、計画停電など大変不便な生活を強いられる方も多かったと思います。

その緊急事態の経験を踏まえ、ライフラインのない自然の環境で生活している国の方々の「ライフスタイルを教えてもらいたい」と、講演活動が多くなったと思っています。

ダイバー歴を教えてください

私がダイバーを志したのは、30代後半でした。前職は音楽雑誌の編集者で、仕事柄カメラマンと仕事する機会も多かったため、カメラに興味があったのです。編集の仕事は業務委託のため、時間に余裕がありました。そこで趣味を作ろうと考えている時に出会ったのがダイビングでした。

海に入るならカメラを持って入ろうと思い、実際に海で撮影を始めると面白く、水中写真の世界にのめり込んで行きました。始めた時はコンパクトデジカメで撮影をしていましたが、もっとイメージ通りの写真が撮りたくて一眼レフに買い換えました。

サンゴ礁

ミクロネシアに旅行に行くようになって良い写真も増えてきたので、写真を発表する場所として、自由が丘の知り合いのカフェにお願いをして、2008年春に最初の写真展を開催しました。これがプロへの第一歩です。

世界中の海に潜っていると思います。今の海洋の現状は?

私は世界中の海に潜っているわけではありません。極めて地域限定で、南太平洋のミクロネシアと呼ばれている海域を中心に潜っています。私はまだキャリア15年と短いですが、サンゴに多少のゴミが引っかかっている場面に出くわします。

むしろ陸のゴミ問題の方が深刻です。以前からこの海域で潜っている人の話では「昔はもっと魚が多かった」と、よく聞きます。写真を見せると「キレイなところですね」と言われますが、実際は「ゴミだらけのところもたくさんあります」と伝えています。

マーシャル諸島でサンゴに絡むゴミを拾うダイビングガイド

ミクロネシアで一番潜っているのはどこですか?

ミクロネシアとはパラオ、マーシャル諸島、ナウルの各国およびキリバスのギルバート諸島地域と、アメリカ合衆国の領土であるグアムなど含まれますが、私はその中でもミクロネシア連邦のトラック諸島やポンペイによく足を運びます。13年間で40回以上訪れています。

ミクロネシアでもゴミ拾いしているんですね

私が主催している清掃活動「マイクロクリーンアップキャンペーン」第一回目は、2018年9月15日にミクロネシア連邦ポンペイ島で行いました。私と麗澤大学、立命館大学、カレッジオブマイクロネシア(ミクロネシア短大)の学生、JICA(独立行政法人 国際協力機構)ボランティア、日本大使館の大使ご夫妻など30名で開催しました。

ポンペイの廃棄タイヤの山
ポンペイの廃棄タイヤの山

2019年2月2日に行われた「マイクロクリーンアップキャンペーン」第二回目は、チューク州ウエノ島で行われました。かつて日本が統治していた時は、春島と呼ばれていた島です。私と創価大学の学生さんと八王子市の職員の方。また、島の住人の意識改革のために活動している現地のNGOの方にお願いをして、約50人で清掃活動を実施しました。

チューク島 ウエノでの清掃活動後集合写真
チューク島 ウエノでの清掃活動後集合写真

とにかくゴミが多いこと、ポイ捨てが当たり前でした。「ゴミ」という概念がない人達なので、ある面仕方ないのかな?と感じました。


2019年の8月にはエクアドル領のガラパゴス諸島へ日本のお客さんを連れてツアーを実施しました。私が主催するツアーでしたので環境問題もテーマにいれ現地のサンクリストバル島とサンタクルス島の2カ所で共に現地の子供たちや環境団体の方々と清掃活動をしました。

また2019年9月には2018年に引き続きミクロネシア連邦ポンペイ島で麗澤大の学生や現地の学生らと清掃活動をしました。これは2グループに清掃箇所を分け、どっちが多く集めたかを競うようにし活動自体を盛り上げました。また麗澤大の学生とともに現地の小学校を2校まわって私がポンペイ島の自然の素晴らしさを写真で説きました。ポンペイ島の後、同国のコスラエ島に寄って現地の環境NGOの方々やJICAボランティア、現地の方々と清掃活動をしました。コスラエ島では道路脇以外にマングローブの水路も清掃しました。この島でも現地の高校を訪問してサンゴの大切を説明しました。

コスラエ島の街の中にはこのようにゴミが散乱
コスラエ島の街の中にはこのようにゴミが散乱

中目黒でもゴミ拾い活動をしているのですか?

はい、中目黒は私の地元です。元々は地元で商売を営まれている方に誘われ、何ヶ月かに一度清掃活動を始めて、かれこれ10年近く参加しています。

そしてその活動とは別に、近隣に事務所を構える企業の方や住民と一緒に、中目黒美化委員会を立ちあげました。私が委員会長となり、2年前から月に1回か2回のペースで1時間くらいかけて目黒川沿いを清掃しています。このように数多くの清掃活動が行われる様になったのは、街に関わる人々の意識が上がったことが要因だと思っています。

中目黒美化委員会 ゴミ拾い集合
中目黒美化委員会 ゴミ拾い集合

また、桜が満開の時期には花見のお客さんがたくさん来るので、ゴミがひどくなります。その時期に限り、特別にゴミ分別のエコステーションを作って、私が講師を務める専門学校の生徒や近隣の方々と対応しています。

ホームページを拝見するとクジラ問題、マグロ養殖、サンゴの植え付けなどいろいろ経験されていますね?

千葉県和田浦にIWC(国際捕鯨委員会)からも規制が外されている小型鯨類のツチクジラも解体を見てきました。捕鯨問題は動物倫理の視点から勉強させられることが多いです。

また、クロマグロが減っているニュースが流れていますが、「減っているから食べるのやめなさい」と頭ごなしに反対・ダメという話は、昔の環境保護論者の考え方だと思います。今は安定供給しようと一生懸命頑張っている方も大勢います。

例えば、近大が先駆けとなったクロマグロの完全養殖や、クロマグロの稚魚から育てる蓄養という方法もあります。東京海洋大学では、サバにクロマグロを産ませる研究も進んでいます。

岡山理科大学では、完全閉鎖循環式魚類養殖技術の開発で世界的に注目されています。ナトリウム、カリウム、カルシウムの3つの成分に着目し、その最適な濃度を特定し「好適環境水」と名付け、この水を使った養殖の研究が進んでいます。

このように反対だけはなく、前向きに考えている方は大勢いることを知っていただきたいです。

道城さんの環境に対する意識はとても高いと思います

ミクロネシアの風景
ミクロネシアの風景

世間の環境保護の活動は「あれはダメ、これもダメ」という話になりがちです。しかし、例えば「温暖化が進むから二酸化炭素を出さない生活をしましょう」などの「結果ありき」な意見が多いですが、僕は「結果ありき」にはこだわっていません。反対するばかりでなく、逆の立場の人間の考え方も汲み取っていこうと思っています。

「持続可能な生活を念頭に置いて、賛成派も反対派も同じ机で議論していきましょう」という考えが、私が一部に見られる過激な環境団体と違うスタイルだと思っています。

環境活動をしている中での問題点は?

私が活動しているミクロネシア連邦の問題点は、島嶼国がとても弱い立場であることだと思っています。すべての生活必需品は海外に依存しているので、多くのプラスチック製品も入ってきます。しかし、これらの商品は使用済みになっても処理する場所がありません。

ゴミ拾い風景
ゴミ拾い風景

島嶼国では、土地が狭い(狭小性)、輸入に頼る(依存性)、島が点在しているため行政サービスが行き届かない(隔絶性)、などの問題が表面化しています。日本から何か援助をしようにも、遠距離(遠隔性)なので難しいのです。

島嶼国ではゴミはどのように処理していますか?

捨てた物は自然に還るという考えがあるので、元々はゴミという概念がありませんでした。だから、その辺に捨てる。いわゆるポイ捨てが当たり前の人達でした。

しかしそれによる悪影響を考え始め、さらには私たちも支援を始めております。東京都八王子市はJICAによるミクロネシア州チューク市「草の根技術協力事業」の一環としてゴミの問題に取り組んでいます。2013年に八王子市が寄贈したゴミ収集車で、集めたゴミは集積場に運び埋めています。

本来はリサイクルを推奨したいのですが、施設が必要になるので、現在はリデュース・リユース「2R」を徹底するように島民に協力してもらっている状況です。

車はリサイクルの場所がないため放置のまま
車はリサイクルの場所がないため放置のまま

また、日本はJICAを通じて大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト(通称J-Prism)という支援プロジェクトを行っています。これは「三つのR+リターン」の考えのもと、自然に還せるものは自然に、原産国に還せるものは原産国に還すというもので、そこにはゴミの徹底分別が求められます。その分別方法は、ゴミ再資源化率日本一である鹿児島県志布志市のやり方を取り入れています。他にも島によってはデポジットの制度を取り入れたところもあります。

今後の活動は?

マイクロクリーンアップキャンペーンは引き続きやっていきます。その活動の模様と報告は2018年に開催したミクロネシア連邦の写真展を継続してやっていくことで公表していきますが、今年はコロナウイルスの影響でミクロネシア連邦にも行けてないのでまだ写真展を開催できるかはわかりません。もし行けるのならばまた清掃活動をする予定です。

また清掃活動以外にミクロネシア連邦ポンペイ島とコスラエ島でマイクロフォトプロジェクトを実施していく予定で、ポンペイ島では麗澤大の学生たちに手伝ってもらう予定ですし、コスラエ島では現地NGOに手伝ってもらう予定です。私たちが環境活動したり、国を挙げて支援したりしても限られた時間のなかでしか出来ません。そこで現地の学生たちにカメラの使い方を教え、島の良い部分や悪い部分などすべてを撮ってもらい、写真という媒体に固定し、それを見ることで"反省"、"見直し"、"確認"ができると思います。そうしたら彼ら自身「綺麗な部分が島にあるからもっと綺麗に清掃しよう」とか「ここは汚れやすいから頻繁に清掃しよう」という気持ちになるのではないかと思っています。これがマイクロフォトプロジェクトです。また麗澤大の学生からのアイデアで撮った写真でカレンダーとかが作れれば良いねとも話をしています。このマイクロフォトプロジェクトは来年2021年の2月あたりから始める予定で、現在株式会社ニコンCSR部協力の下、コンパクトデジタルカメラを15台いただきました。このうち5台をポンペイ島で、5台をコスラエ島で使う予定です。残りは予備として順次対応できるよう残しておきます。

また講師経験もありますし、ビジュアルの素材もたくさんありますので、現在秋ぐらいから自然環境学校の開設を予定しています。

目標などはありますか?

私はあまり目標や夢、ゴールなど持たず、日々目の前のことにしっかり対応することを心がけています。私は人を論破することはしませんし、際だって反対することもしません。それぞれの考え方を汲み取って、自分の意見を言えるような世の中で良いと思っています。

我々に出来ることは?(あなたの力が必要な理由)

環境問題の難しさは利害関係が多いことです。でも考え方の違いや利害関係なく一番手軽にできるのが清掃活動です。家の周りや職場の周りでもゴミ拾いをしてください。それが環境活動の第一歩です。まずは足元を見ることが大切だと思っています。ゴミ拾いをやりましょう。

道城さんの想い

本来あってはならないものが、そこにあるということを不自然に感じています。私が撮影する写真にゴミが写っていたら自然ではありません。海洋ゴミ問題は、日本人は加害者であり被害者です。ミクロネシアも同じこと。「なんで道城が南の島で清掃活動を?」と聞かれますが「ゴミに国境はないからだ」と返事をしています。

ミクロネシアでの清掃活動の集合写真
  • ゴミ拾い・環境ポータルサイトBLUE SHIP (海と日本プロジェクト)参照
    【BLUE SHIP主催】日本財団・NPO法人海さくら
    https://blueshipjapan.com/

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