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豊かな未来のきっかけを届ける

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「師匠は自然。」自宅にサンゴ礁の海を作る、水生生物マニアにインタビュー

イノカ

初めまして、イノカの河野です。

私たちは、「自然の価値を人々に届ける」をミッションに掲げる東大発のベンチャー企業です。

普段は、海洋環境についての知見や技術をベースに、環境教育プログラムを開催したり、Gyoppy!さんに水生生物に関する論文解説記事を寄稿させていただいたり、幅広く活動しています。

突然ですが、私たちイノカが常日頃から感じていることがあります。

それは

アクアリスト達の熱を世界中に還元したい!!!

ということです。

趣味で魚やサンゴなどを飼育するアクアリストの方々の中には、自分が育てている生体をいかに健康に、いかに美しく育てるかを年中無休で考えている人がいます。また、そのために研究者顔負けの実験を日々繰り返し行っている人もいます。

世間でも有名な生き物マニアといえばムツゴロウ先生やさかなクンを思い浮かべるかもしれません。しかしアクアリストの中にはそのくらい強い思いを持って生き物に向き合っている人がたくさんいるのです!!

そんなアクアリストの方々の生き物にかける熱い思いとその想像もつかないようなマニアックなこだわりを世界中に発信すべく、実際にアクアリストの方々にインタビューを行なおうというのが、この企画です。

「アクアリストって面白い」「生き物って面白い」という風に感じて頂ければ私達はとても嬉しいです。

今回は、私達のチームを代表する生き物マニア、なおきんぐこと増田直記さん(以下、なおきさん)にインタビューを行いました。
なおきさんは自宅にとても巨大な水槽を持っており、そこで美しいサンゴ礁を築きあげています。私も事前になおきさんの水槽を見させて頂きました。

それがこちら!!!

なおきさんの水槽

圧巻ですね......!

あまりにも綺麗にサンゴ礁が再現されていてまるで海の中に潜ったかのような感覚になりました。日本でもトップレベルと言っても過言ではないと思います。

ちなみにこの水槽があるのは自宅だそうで......
こんな大きな水槽にサンゴを盛り盛りに詰めているなおきさんはかなりマニアックなはず......とインタビュー前から期待に胸を膨らませてしまいます。

私もなおきさんと同じチームで働いているものの、なおきさんのアクアリストとしての一面を全て知っている訳ではなく、今回の取材を通して新しいマニアックな一面が見られると思うとワクワクします(笑)

ではインタビューしていきたいと思います。インタビュアーは私達のチームのCTO栗田です。ではインタビュースタート!

栗田
本日はよろしくお願いします。
なおきさん(なおき)
よろしくお願いします。

飼育している水生生物の種類について

栗田
まずはじめに飼育している水生生物の種類を教えてください。
なおき
そうですね。僕は個体というよりサンゴ礁を作りたいっていうのがあって、そういう意味ではサンゴ礁を飼育していると言えるかもしれないですね。
栗田
ということはサンゴがあって、そこに住む生物も飼っているということですかね。
なおき
そうですね。なるべく多種多様な生き物を入れることでサンゴ礁を再現しています。

水生生物の飼育歴について

栗田
飼育歴はどれくらいですか?
なおき
そうですねサンゴ水槽ということなら7年くらいです。
栗田
サンゴ水槽でということであれば他にも何かやられていたんですか?
なおき
淡水や熱帯魚であったり、後は小さい時に取ってきた魚とかですね。そういうのを含めると物心ついた時からやってました。
栗田
小さい頃から生き物大好きだったんですね。
なおき
そうですね、生き物大好き少年でした(笑)

水生生物を飼育し始めたきっかけについて

栗田
サンゴ礁水槽を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
なおき
小さい頃から生き物に触れることが多かったんですけど、そのきっかけとしては祖父が中学の理科の先生だったというのがありまして。疑問に思った時には祖父が詳しく答えてくれたりしていましたね。その他にも取ってきた生き物を飼育して観察してみたりとかしてました。それで小学生の頃は自由研究で県で表彰されたりとかしていました。
栗田
おーーすごいですね! どんなことで表彰されたんですか?
なおき
これに関しては水生生物じゃなくて、確かアゲハ蝶の一生を追いかけるような成長記録だったり、セミの幼虫が羽化する様子を観察したり......
栗田
色々やってますね(笑)
なおき
後は、メダカに関しても研究しましたね。3つ水槽を用意して、片側を連結させた水槽から水を流すことで上流・中流・下流を再現して、その中のどこに一番住み着くのかという実験をしました。
栗田
めちゃくちゃ面白いことやってますね(笑)それにしても県で表彰ってすごいですね。
なおき
そうですね、アゲハ蝶とセミに関しては頂きましたね。
栗田
小さいころから水生生物に関わらず生き物全般が好きなんですね。
なおき
はい、顕微鏡とかも家にあって(笑)
栗田
それは面白いですね(笑)
なおき
ワラジ虫とかミジンコとかを取ってきて観察したりしていて。実際に田んぼに行って取ってきたりしていました。そんな風に生き物を飼育したり観察したりするのが好きだったんですけど、生態系を作るのにハマっていって。その中でサンゴ礁をいつかやりたいと思うようになったんですよ。
栗田
実際にある生態系を家庭で再現するっていうことですよね。
なおき
そうですね。ドラえもんに「のび太の創世日記」っていう映画があるんですけど、その中でひみつ道具を使って地球を作っていくんですね。そこで海の中で生き物が生まれて、それが繁栄して進化していくという様子を見た時に、「自分も生き物の流れを作って見たい!」と思ったのは大きいですね。

水生生物の魅力について

栗田
サンゴの魅力について教えてください。
なおき
やっぱり先程の話にも出てきた生態系を見れることが面白いですね。1つの生き物を見るだけではなく、全体を見つつ細かいところも見れるということが面白いですね。その中でも具体的には様々な生き物の共生関係・寄生関係を見たりすることも楽しいですね。他にもいろんな生き物がサンゴの中とかに隠れていたりするのを見るのも楽しかったり(笑)。アクアリウムの中でもこれだけの見所が1つの水槽の中に詰まっているというのはサンゴ礁水槽以外なかなかないと思います。
栗田
具体的にどんな共生関係・寄生関係が見れますか?
なおき
メジャーなものではカクレクマノミですね。
カクレクマノミ

イソギンチャクと共生しています。誰が教えた訳でもなくイソギンチャクに触れたら危険ということを魚は認知していて、イソギンチャクには魚が近づかないんですね。でもカクレクマノミはイソギンチャクの刺胞毒に順応しているので天敵から自分の身を隠すようにイソギンチャクに住み着いているんですよね。
他にも共生している生物でいうとサンゴガニというのがいます

サンゴガニ

こいつはサンゴの枝に住み着いているんですよ。そこでサンゴガニはサンゴの粘液を食べてたり、サンゴの中に流れ込んでくるエサを捕食したりして生活をしています。そして住まわせてもらう代わりに、サンゴを食べるオニヒトデがサンゴに近づいた時はハサミで追い払うんですよ。

栗田
普段住まわせてもらってる代わりに危ないやつは俺が倒すぜ!みたいな感じですね(笑)
なおき
そうですね。その光景は見たいんですけど、オニヒトデはサンゴを食べてしまうので、なかなか水槽には入れられないんですよね。もし夢が叶うならとんでもなく大きい水槽で1匹くらい入れてみたいですね(笑)

水生生物の豆知識について

栗田
これ面白いなと思う水生生物の豆知識はありますか?
なおき
個人的に好きな生き物としてフェイスブックのアイコンにもしているフリソデエビっていうえびに関してですかね。フリソデエビはヒトデしか食べないんですよ。ヒトデを専食しているんです。
フリソデエビ
栗田
専食......ですか?
なおき
ヒトデを専門に食べるということですね、その時点で面白い。さらに見た目が綺麗でまるで振袖をきているようなんですね。ペアで飼育することで寄り添って生活をする姿がまた可愛いです。そして餌がなくなると水槽の中を歩き回り始めます。その時にこっちでヒトデを入れてあげたら、どうやらヒトデの匂いや何かしらで、ヒトデが近くにいることを認識してヒトデを探し始めるんですよ(笑)そしてヒトデを見つけたら小さい方であるオスが率先してヒトデをひっくり返すんですね。その後ちょうどひっくり返ったころにメスもきて体の隙間に毒針を刺すことで麻痺状態にして、住処に2匹でがんばって引きずって巣に持って帰って生きたままゆっくり二人で食べる、と。
栗田
まるで夫婦みたいなことを(笑)
なおき
まさに夫婦みたいな感じですよね(笑)可愛らしさと恐ろしさもあるという。あとはヒトデを探し回るときに、両ハサミを前に出して、両手をくるくる回す独特な動きをするんですね。おそらく何かに擬態しているつもりなんですけど、それがめちゃくちゃ可愛い。なんでだろう?っていう動きをしながらゆらゆらと歩き回ってヒトデを探すんです。

水生生物の飼育で大変なことについて

栗田
サンゴ礁を育てていく上で大変なことはありますか?
なおき
そうですね、やっぱりサンゴが健康的に育つための設備を整えるのが大変でしたね。
栗田
サンゴって普通の濾過器やヒーターだけじゃ育たないんですか?
なおき
そうですね、サンゴが海の中でも特に綺麗な環境のところでしか生息してないことも考えると、それなりの環境を用意してあげないと飼育は難しいですね。さらに飼育だけでなく成長させるとなると、もうワンステップ難しくなるというところはあります。
栗田
そうなんですね。他に大変なことってありますか?
なおき
サンゴ礁を作るに当たって喧嘩をしてしまうナワバリ意識を持った魚もいるのでそれらの生き物が共存できるかどうかを考えるのも大変です。色々な生き物を入れるためには最低限の大きさの水槽が必要なんですね。今は150cmの水槽なんですけど、それでも小さく感じます(笑)
150cmの水槽
栗田
水槽を見させて頂いたんですけど、かなりぎっしりうまってますよね(笑)
なおき
あと4倍は欲しいですね。
栗田
4倍......! もはやプールみたいになってくるんじゃないですか......(笑)
なおき
でもその方がしっかり自然を再現できるんじゃないかな。
他にも飼育する上で大変なこととして、飼育するための正しい知識を学ぶ場所がなかなか無くて、経験を積んだり、細かいところを調べたりしないといけないというところも難しいですね。やっぱり最初は上手く飼えなかったサンゴも何匹もいるし、生息環境の兼ね合いから今でも上手く飼えないサンゴもいますね。
栗田
なおきさんでも難しいと思うものがあるんですね......

水生生物の飼育で工夫していること

栗田
飼育で工夫していることについて聞かせて頂いてもいいですか?
なおき
先ほども述べたようにサンゴが育つための設備や条件は難しいので、その設備や条件を保ちやすいようにしています。例えば、水換えをしやすくしたりなどの工夫をしています。
栗田
水換えの工夫というのは具体的にはどんなことをされてるのですか?
なおき
具体的には水換え専用の水槽があったりしますね(笑)また、そういう水槽内の環境を保つために必要なことをするための部屋があります。いわゆるバックヤードですね。
水槽内の環境を保つために必要なことをするための部屋
栗田
バックヤードまであるんですか! 完全に水族館ですね(笑)

これから飼育でチャレンジしたいこと

栗田
これから飼育でチャレンジしたいことってありますか?
なおき
チャレンジしていきたいことはたくさんあるんですけど、まず第一には生き物をどれだけ長く健康で飼育できるかということですね。自然界と同じでサンゴ同士が接触したら弱い種が淘汰されているという状況も出てきます。できるだけ自然に近い環境で育てたいので、ある程度ケンカもさせつつ、弱いサンゴを守ってあげたりもしながら、水槽の中で生態系を維持していきたいと思っています。種を保存するためフラグメントという株分けも行っています。他にも可能であればサンゴの産卵とかさせて、自宅で養殖をするというのもチャレンジしてみたいです。その他にも逆に今のサンゴを全部出してしまって、一つの種類をどれだけ大きく飼育できるかにもチャレンジしてみたいです。でも多様性の方向も頑張りたいのでどっちをやるか悩ましいところではありますね。

水生生物の面白さを世の中に広めたいか。yesなら何かチャレンジしていることはあるか

栗田
ちょっと別の角度からの質問になるのですが、水生生物の面白さを世の中に広めたいと思ってたりしますか? またyesなら何かチャレンジしていることはありますか?
なおき
世の中に広めたいとは思っている。やっぱり世界的にサンゴ礁が減っているとか、それって趣味に直結していることですし、好きなものが無くなっているというのは悲しい事でもあるし。こんなに面白くて美しいものがどんどん無くなっている事を知ってもらいたいですし、そもそもサンゴっていうものが生き物ということも知らない人もたくさんいるので。そういうことをみんなに知ってもらうために少しでも貢献できたらなと思いますね。そのためSNSやブログで発信をしています。他にもYouTubeに動画をあげたりなんかもしています。

自分がすごいと思うアクアリストはいるか

栗田
先ほど水槽を見せて頂いて、かなり凄いなということは分かっているんですけれども、なおきさんが凄いと思うアクアリストはいますか?
なおき
うーーん......そうですね、この質問が一番難しいかもしれないですね。自分の求めるすごさが他の人と若干ずれているところもあったりして。それぞれやっぱり何か一つの生き物に特化して好きな人や、マニアックな人を見ればもちろん凄いとは思ってはいるんですけど、常に目標とし続けているのは自然なんですよね。なのでこの質問が一番難しいですね(笑)
栗田
おお、かっこいい......! 自然が最大の師匠ということですね。
なおき
そうですね。かといってもちろん他の人が作る水槽が面白くないという訳ではなくて、どんな水槽にもその独自の世界ができ上がっているので、それを見るのはすごく好きです。なので色々な人の水槽も見に行かせてもらったりしていました。そういう意味ではどの人の水槽も凄いと思えます

あなたにとってサンゴ礁とは

栗田
では最後に。あなたにとってサンゴ礁とは?
なおき
いつか作り上げたい「夢」です。もちろん憧れでもあります。
栗田
おー、最後に素晴らしいお言葉ありがとうございます! ぜひ作り上げていきましょう!
色とりどりのサンゴ
栗田
本日はありがとうございました。
なおき
こちらこそありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。なおきさんのアクアリストとしての熱が伝わったのではないでしょうか。このインタビューを通して、美しい水槽の背景には膨大な知識や経験や努力があったということが分かりました。
また「常に目標としているのは自然」という言葉になおきさんの自然を愛する気持ちと、飼育に対する妥協の無さが伺えました。

最後に

なおきさんの水槽に関してはこちらのInstagramでも発信しています。画像だけで無く動画もあり、色々な表情をした水槽を見ることができますよ。

また、なおきさんが「なおきんぐハカセ」に扮し、子どもたちに生き物の大切さを教える「よこはまサンゴ礁ラボ」が、2020年9月から開始します! 興味のある方は無料オンライン体験会も開催していますので、ぜひご参加ください。

※なおきさんが「Chief Aquarium Officer」(最高アクアリウム責任者)として参加している株式会社イノカの最新情報は、こちらのTwitter公式サイトをご覧ください。

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