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豊かな未来のきっかけを届ける

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巨大なノルウェーサーモンの養殖施設を調べてみた

海といのちの未来をつくる

冷たく澄んだ海で育てられるノルウェーサーモン

遥かかなたノルウェーの海で育てられ、日本へ輸出されるノルウェーサーモン。お寿司のネタとしてすっかり日本の文化にもなじんできているのではないでしょうか。

そのノルウェーサーモンがどのような環境で育てられ、この先どのようになっていくのかについて調べてみました。

いけす

ノルウェーサーモンとは、アトランティックサーモンという種類のサケのこと。世界で約240万トン養殖(2017年・FAO:国連食糧農業機関)されており、その半分の約130万トンはノルウェーで養殖(5%のトラウト含む)されています。第2位のチリが約90万トンなので断トツの養殖量です。

歴史をたどると、1959年にデンマークの淡水養殖場からの紹介で、トラウト(ニジマス)の養殖を始めたことに起因します。トラウトが海水でも順応することに気づいたことから、海面での養殖は始まりました。そのトラウトの養殖の応用により、1970年にヒトラ島にアトランティックサーモンの養殖場が造られたのです。そこから現在の、アトランティックサーモン主体の養殖へと向かっていくこととなります。

そして1985年に初めて生食消費され、今では世界100ヶ国に届けられるまでに産業が成長しています。

ノルウェーサーモンの未来

世界地図でノルウェーを確認すると入りくんだ地形がわかる

ノルウェーでのアトランティックサーモン(トラウト含む)の養殖量が2017年は約130万トンであることは述べましたが、ノルウェーでは2050年には500万トンに養殖量を増加させるという壮大な計画を立てています。

入り組んだ地形ながら静かな海のフィヨルドが、海岸のあちらこちらに点在するノルウェー。養殖に向いた地形なのですが、ノルウェー政府はこれ以上フィヨルド内での養殖場の増加を認めない方針になっています。

このため、養殖会社は様々な革新的な養殖施設を政府に提案し、外洋での認可を求めているところです。

石油採掘技術を応用した沖合設置型の養殖場

石油採掘技術を応用した沖合設置型の養殖場はすでに実用が始まっており、2018年に初めての水揚げを行いました。ノルウェーは1970年代に北海油田を発見し、海上には石油採掘のステーションが点在しています。この先はサケの養殖が同じように散らばっていくかもしれません。

巨大ないけすを持つ船

巨大ないけすを持つ船での養殖も提案されています。移動が可能なため、養殖で問題になるシーライス(寄生虫)を避けて養殖場所を変えていくことが可能です。写真のこの1隻で約1万トンもの養殖が可能です。2隻あれば、それだけで日本の海面養殖のギンザケの養殖量に相当することになります。

これら以外にも、閉鎖型の卵型の施設など、ユニークな海上での養殖施設が次々に考案され、実用に移されようとしています。

ノルウェーサーモンの養殖環境

円形の養殖施設
 

現状の養殖施設は、写真と図のような円形の設備が典型的なものです。養殖池の中は、海水97.5%に対して、魚の割合を2.5%にすると定めています。給餌は自動化され、水中カメラでサーモンがエサを食べる様子を見ながら餌の量を加減するといったIT化が進んでいます。
また、天然のサーモンに影響を与えないよう、サーモンにしるしを付けて追跡しています。逃げたサーモンを取り出すための環境基金もあり、もしサーモンが脱出した場合、養殖場の企業に対し、1匹あたり500ノルウェークローネ(約6,000円)の罰金が科されます。

養殖池の海水と魚の割合を示す図

エサの話

餌の割合を示すグラフ


アトランティックサーモンは、体重を1kg増やすのに1.2kgの餌で済む養殖効率の良い魚です。餌の配合を見てみると、グラフの通り約7割が植物、3割が魚由来の原料で構成されています。
また、餌に使われるすべての魚由来の原料はきちんと管理されたもので、野菜の切れ端や産業用の魚など、人間の食用には向かないものを利用します。過去10年間で餌の量は30%削減されており、今後養殖技術がもっと進歩すれば、さらに減少することでしょう。

養殖サーモンの一生

サーモンの卵、稚魚、幼魚、成魚

養殖は、淡水と海水の両方で行われます。卵からかえったあとの10~16ヶ月は淡水で飼育され、海水に移す前はわずか60~100gの大きさに過ぎません。その後14~22ヶ月の間、海水で育てられ、加工に適する4~6kgに成長してから出荷されます。

日本ではギンザケが海面養殖されていますが、ノルウェーのアトランティックサーモンのように4~6kg、もしくはそれ以上の大きさのものは見かけません。それはギンザケ自体が大きく育たない種類というわけではなく、育つ前に水揚げしてしまわなければならない理由があるからです。

その理由は温度。日本はノルウェーとは異なり、夏の海水温が、サケを養殖できる適水温を超えてしまいます。このために水温が上昇してしまう前に、水揚げしてしまわねばならないという事情があるのです。

サーモンの寿司

しかしながら、水温上昇の問題を解決する手段として、陸上養殖が各国で進んでいます。アメリカのマイアミやノルウェー、そして日本でも研究が進んできています。陸上の養殖は海洋と異なり規制が少なく、またアメリカの養殖場のように、消費市場に近い場所で養殖することも可能です。

陸上養殖は、まだ緒に就いたばかりですが、先行投資はどんどん進んでいます。先に述べたようにサケの養殖のボトルネックの一つは温度管理ですが、陸上養殖はそれを解決できると考えられています。

ただし、水温を管理するためには、たくさんの電気を消費するので、省エネ対策が重要になってくることでしょう。しかし電力や養殖技術の問題が解決されていけば、これまでの常識が覆る場所で、サケの養殖ができるようになるかもしれません。

世界に向けた安定供給のため、画期的な技術開発が期待されます。

\ さっそくアクションしよう /

海や魚にまつわること、水産物の世界、魚の味わい方などについて知ることが、海の豊かさを守ることにつながります。

海といのちの未来をつくる(外部サイト)
https://umito.maruha-nichiro.co.jp/

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