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「スケープゴートにしないで」レジ袋の有料義務化で窮地に立つ業界社長の本音

エコトピア

中川さん
「この業界は中小零細が多く、影響の大きさを心配しています」と語る中川さん(筆者撮影 転載厳禁)

海洋汚染の元凶とされている使い捨てプラスチックを削減するため、レジ袋の有料義務化が東京オリンピックの始まる来年7月の1日から全国の小売店で一斉に実施されることになりました。使い捨てプラスチックの中で、コンビニやスーパーの多くで無料配布されているレジ袋だけに焦点をあてた国の施策に対し、レジ袋を製造する事業者たちから、業界の死活問題にかかわると懸念する声が高まっています。レジ袋は自宅で内袋にしたり何回もリユースされたりしており、どれだけの削減効果があるのかよくわからないなどとし、レジ袋に狙い打ちしたような政策に投げかけています。レジ袋の製造業者でつくる日本ポリオレフィンフィルム工業組合常任理事を務める、大手メーカー中川製袋化工(株)社長の中川兼一さんに本音で語ってもらいました。

── レジ袋がやり玉にあがっています。経済産業省と環境省の審議会の合同会議で、有料義務化に向けた論議が急ピッチで進められ、11月1日の合同会議で、来年7月1日から全国の小売店で一律に有料化が義務づけられることになりました。合同会議の議論は9月に始まったばかりで、11月の合同会議はたった3回目。パブリックコメントの後、12月に容器包装リサイクル法の省令を改正と異例の速さです。オリンピック開催前に導入し、国際的にアピールするのも目的にあるようです。

驚いています。どうしてレジ袋の製造業界が、一人悪者扱いされなきゃいけないんだと、義憤すら感じています。

── というのは?

プラスチックによる海洋汚染問題が世界的な問題となり、日本もその汚染防止のために取り組むことになりました。それ自体には私も大賛成です。政府はこの春にプラスチック資源循環戦略を策定しました。日本から年間900万トンのプラスチックごみが排出され、うち約400万トンを容器包装プラスチックが占めることから、それを中心に2030年までに使い捨てプラスチックを25%減らす目標を掲げています。ところがどんな手法で減らすのかというと、レジ袋の有料化を義務づけるのだと。戦略にはそれだけが書かれていて、他のペットボトルをはじめとするプラスチック製品や材料についての記述が何もないのです。それでこれはレジ袋をねらい打ちしているのではないかと、驚いたわけです。

── しかし、レジ袋は無料配布によって大量に頒布され、それが捨てられ、海洋汚染をもたらす要因になっていると指摘されています。

ちょっと待ってほしいのです。レジ袋は使い捨てプラスチックの象徴のように言われています。なるほどコンビニでもらうレジ袋は小さく、すぐに破れてしまうほど薄いもので使い捨てと言ってもよい。しかし、スーパーなどのレジ袋はもう少し厚みがあって大きい。みなさんもちょっと思い起こしてみるといいと思います。買った物をレジ袋に入れて家庭に帰ると、そのレジ袋をいろんな用途に使っていることがわかるのではありませんか。例えば生ごみを入れる内袋として使ったり、日用品を小分けして保管するのに使ったり、バッグに入れて再び使用したり、あるいは犬の散歩の時に糞の始末に使ったり。これらは、みな再使用、いわゆるリユースです。さらに、いまでもかなり多くの自治体が、ごみ袋の代わりにレジ袋を使うことを認めています。有用性があるからに他なりません。どこが使い捨てなのでしょうか。

── なるほど、有用性はありますね。

実はこのレジ袋を考案したのはわが社なのです。1962年祖父兼人の社長時代のことです。東京営業所にナシ農園の方から相談がありました。客がナシをもいで竹カゴに入れてもらっているが、竹のささくれで女性のストッキングが破れる。そんな苦情を受けて困っている。何とかならないかというのです。そこで当時営業所長だった青井龍夫が考えたのが、ポリエチレンの四角形の袋の上部に2本の切り目を入れて、手で提げられるようにしたことでした。ナシ農園は喜んでこれをカゴの代わりに使いました。やがて70年代にスーパーが着目し、爆発的に普及することになります。女性の悩みの解消から考案されたレジ袋は、便利でかさばらない、時代の要請にぴったりあったものだったのです。

中川さん
「プラスチックの袋の上部に切り込みを入れたのが、レジ袋のきっかけです」と語る中川さん(筆者撮影 転載厳禁)

── 政府の合同会議の議論を聞いていると、「わかりやすい」という言葉が頻繁に出てきます。なるほどレジ袋は消費者にとってわかりやすい。

身近ですから。でもそこが問題なのです。ある省庁の官僚と話す機会があり、私は、「なぜ、レジ袋をねらい打ちするようなことをするのですか?」と尋ねました。返ってきた言葉が「わかりやすいから」。スーパーでレジ袋をもらうのを辞退することで、プラスチックを減らした、一つ環境にいいことをしたと実感できる。消費者にとってわかりやすい、イメージがよいというのです。それ以外にもプラスチックごみを減らす方法はたくさんあると思うのですが、こんな理由で、レジ袋を標的にされたのではたまりません。

── 有料化でレジ袋を製造している業界は相当のダメージを受けそうですね。

実は、レジ袋を造る製袋業界は中小零細が圧倒的です。私の会社は年商100億円にすぎませんが、それでも132社が加盟する工業組合でレジ袋製造では二番目に大きい。業界の地位も高いとはいえません。それに組合に加盟せず夫婦2人で営んでいるような零細業者がたくさんあります。こうした零細も含め、全国に約300社以上いるポリオレフィンフィルム製造業者の半分以上がレジ袋を造っていると見ています。また、包装資材ディーラーと呼ばれる商社もかかわっています。国内に約1000社以上はいると言われるそのほとんどがレジ袋の取引をしているといわれています。

プラスチックのペレットを熱で溶かし、それを造粒機で薄いプラスチックにし、ロールにまいている(滋賀県長浜市の中川製袋化工長浜工場 筆者撮影 転載厳禁)

── 滋賀県長浜市にある貴社の工場を見学しました。ポリエチレンから手提げ袋やレジ袋、ごみ袋。ポリプロピレンからクリーニング店で使う袋やパンを包む袋が造られていました。ペレットを溶かし薄いフィルムにし、そこから様々な製品が造られていました。フィルムにするまでの工程は男性社員、フィルムから袋を造る工程は女性社員と、分担しながらきびきび働いているのが印象的でした。みな地元の人たちで、地域の雇用にも貢献していますね。ところで有料化の動きはいまに始まったことではありません。大手スーパーを中心に10年ほど前から試みが広がりつつありました。当時から影響があったのでしょうか。

これまで大手スーパーは、レジ袋の有料化自主規制を実施し削減努力をしてきました。彼らのレジ袋は中国からの安価な輸入品が多かったですが、その流れの中、国産品を中心に使用する中規模スーパーも有料化を実施し、国内の業者も同様に多大な影響が発生しました。そういう状況にも立ち向かい、残存の国内の業者の造るレジ袋を引き続き使っている地方の小さなスーパーや一般商店を相手に今何とか生き延びています。今回一律に小売店が使うレジ袋の有料化が義務づけられると、真っ先に影響を受けるのが国内の製造業者です。零細業者を中心に倒産が多発し、路頭に迷う人もでることでしょう。でも彼らは声を出せません。有料化を声高に叫ぶ人たちは、彼らのことに思いが及ばないのでしょう。

このラインでは、製造したプラスチックのロールから、袋を造っていた。箱詰めなどの仕事も女性社員が担っている(滋賀県長浜市の中川製袋化工長浜工場 筆者撮影 転載厳禁)
女性社員が、ロールから袋をつくる作業をきびきびとこなしていた(滋賀県長浜市の中川製袋化工長浜工場 筆者撮影 転載厳禁)

── 深刻な問題ですね。

私は何も特別扱いしてくれと言っているわけじゃありません。レジ袋の流通量は私の試算で年間20~30万トンあります。この数字は使い捨てが多いと言われる容器包装プラスチックごみの5~7.5%にすぎません。それに比べて、例えばペットボトルは、国内の販売量は約59万トンあり、レジ袋の2~3倍になります。ところがペットボトルを削減しようという声は、政府内からも合同会議からも出ません。

── そういえば環境省の「プラスチック資源循環戦略」をつくるもとになった審議会で、大学教授の委員が、「ペットボトルの削減を戦略に入れるべきだ」と提案したところ、業界側の委員らから、「生産の規制につながるようなことは書くべきではない」との反論が相次ぎ、結局戦略に書かれずに終わりました。大手飲料メーカーや販売者のスーパー、コンビニにとってペットボトルは利益を生む源泉で、もし生産を抑制したら、彼らの利益が減少してしまうからでしょう。審議会の委員にもなり、発言権と影響力のある彼ら大手業界に対し、レジ袋の製造業界は小さく、委員にも選ばれていません。合同会議では、中川さんが1回ヒアリングを受けただけでした。不合理さと不公平さを感じました。

ペットボトルに比べてレジ袋は、有料化されても消費者が代金を払うからスーパーやコンビニの負担にはなりません。むしろもうかります。スーパーもコンビニも今回有料義務化に賛成したのは、痛みを伴わないどころか利益になることが背景にあるのだと思います。

中川製袋化工が製造しているバイオマスプラスチックを含んだバイオマスレジ袋。バイオマスレジ袋はすでにスーパーなどに出回り始めている(筆者撮影 転載厳禁)

── ただ、レジ袋をいまのように無料で大量配布する時代ではないことも事実です。多くの国がすでに取り組んでいるのですから。そこで業界としてどんな対応策を考えていますか。

従来のプラスチック製に代わるものとして生分解性プラスチックとバイオマスプラスチック、再生原料を使った再生プラスチックを使ったレジ袋化があげられます。業界もこれまで先駆けて取り組んできた訳ではありますが、この動きが一層進んでいくと思います。一部ではレジ袋からレジ袋を造る動きもあります。ただそれぞれに課題があり、すぐに取って代われるわけではありません。例えば、ブラジルにある世界最大のバイオマスプラスチックメーカーの生産量は年間20万トンに過ぎません。戦略では、バイオマスプラスチックを2030年に200万トン導入するとの目標値を掲げていますが、私は懐疑的です。そういうことを承知の上でも、政府がレジ袋の撲滅の方向に舵を切るつもりならば、今後は、事業者が代替品へ転換するための補助金や、急激な環境の変化で売上減少に困った事業者への支援の相談など、私たち業界にも親身になって対応してほしいと思います。国の政策によって経済的苦境に立たされる企業は保護されるべきだと考えます。

「バイオレジ袋の普及に力をいれたいが、原料の供給体制に難点がある」と語る中川さん(筆者撮影 転載厳禁)

── 政府は、バイオマスプラスチックが25%以上含まれている袋と、生分解性の袋、厚みが0.05ミリ以上の袋は有料義務化を免除することにしました。バイオプラスチックなどの代替品を普及させるのは良いことですが、現実に急激に増やすのは難しいということですね。それにお話を聞いていてレジ袋を罪悪視することに懐疑的になってきました。有料化の実施でこの業界の人々に暗い影を落としはしないかと心配です。

いま、レジ袋を製造している会社に勤めているというだけで、環境に良くない仕事をしているんじゃないかと疑いの目で見られたり、悪いイメージでとらえられたりしています。これが有料化の導入でさらに増幅されないか、非常に心配です。これでは社員が誇りを持って働けません。みなさんに喜んでいただける、役に立っていると思いながら、これまで働いてきました。そこのところをわかっていただきたい。四面楚歌であっても、レジ袋は悪くない、レジ袋はこれからも必要とされ続けるのだと、みんなプライドを持っているのです。

中川 兼一(なかがわ けんいち)

1972年広島県生まれ。中央大学から会社勤めを経て2011年に同社社長。

  • 文・取材杉本裕明

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