SDGsに取り組んで売上増! 持続可能な労働環境、地域貢献......能登の酒蔵のやり方

石川県鳳珠郡(ほうすぐん)能登町にある、数馬酒造。若い世代が中心となって、日本酒を通じ、地域を盛り上げている会社です。

日本酒のボトルを日本海に沈めて熟成させた「Single Origine Sake 奥能登 海中熟成」や、イカに合うお酒「いか純米」など、ユニークな商品を企画・製造。

さらに、酒蔵としては珍しく日本酒醸造時の泊まり込みや早朝・深夜の作業の廃止し、休みをしっかり取った醸造体制を構築している。また、在宅勤務も導入するなど、働き方に関する取り組みも積極的に行っています。

そんな数馬酒造は、近年、SDGs(国連によって定められた、持続可能な開発目標)に力を入れています。

圧倒的に、
正しいことをする

持続可能な能登の未来を創るため、
能登の美しい自然と文化、そして産業を次世代に繋ぐことが私たちの使命です。
数馬酒造株式会社(外部サイト)

ホームページに掲げられている上記の言葉、まさにSDGs的なのですが......

実は、数馬酒造は戦略的にSDGsに関する取り組みを始めたわけではないんです。農家さんとのやりとりの中で「自分たちがやっていることって、SDGsなのでは?」と代表の数馬嘉一郎さんが気づいたことがきっかけでした。

代表は、33歳(2020年5月時点)。24歳のときに父から会社を継ぎ、経営者としてのキャリアはすでに9年。数馬さんにとって、SDGsとはなんなのか......それは酒や地域、働き方にどう活かされるのか? 若き代表が描く未来を、聞いてきました。

数馬嘉一郎(かずま・かいちろう)

1986年生まれ。150年以上続く能登の酒蔵「数馬酒造」代表。数馬酒造は、経済産業省から「はばたく中小企業・小規模事業者300社」「地域未来牽引企業」に選出され、奥能登では初めて「ワークライフバランス企業知事表彰」を獲得した、注目の企業。

地域資源を最大限活用したい

── 数馬酒造は、早い段階からSDGsに力を入れていたようですね。

最初は「SDGsに取り組もう」と考えて始めたわけではなくて。きっかけは、農家さんに教えてもらったことです。農家さんから話を聞いて、僕らがやっていることはSDGsなんだなと知って、掲げていた目標に当てはめていったという感じですね。

SDGsは世界共通の取り組みなので、自分たちがやっていることを知ってもらうのに、いろいろな人に伝わりやすいキーワードだなあと思っています。

── 掲げ出したのはいつ頃からなんでしょう?

2年ほど前からですね。そのあと、ホームページにも引用しています。SDGsって、ある意味では地域の中では当たり前にやっていることという側面があると思うんです。だから僕らの場合、もともとやっていたことを、きちんと意思表明しただけです。結果、SDGs関連の問い合わせや講演依頼が増えました。

名刺の裏には、SDGsの情報が

── 実際にはどんなことをやっているんでしょう?

最初は農家さんと、能登半島の耕作放棄地を使ってお米を作ったんです。そのお米を使って、私たちはお酒を造りました。その結果、2年前にはひとつの地域の耕作放棄地がゼロになったんです。今では、東京ドーム約5個分の面積の耕作放棄地が解消されました。

お酒が売れれば、耕作放棄地は減る。そうやって、荒れていた土地が蘇っていく。地域の景観も維持出来る。それは6年前からやっていたことなんですけど、農家さんとのやり取りの中で「あっ、これってSDGsなんだ」と、あとから気づかされて。

── SDGsに関係なく、数馬さんは耕作放棄地を復活させたかった、ということですか?

地域資源を最大限活用するというのが数馬酒造の目標のひとつなんです。あとは、もともとある建物を活用したり。

── 働き方改革に関しても積極的に取り組んでいると聞きました。

酒蔵の醸造期は、泊まり込みで仕事をするのが一般的です。でもうちは、泊まり込みはまったくありません。勤務時間は朝8時半からだいたい18時まで。みんな通いで、休みを取りながら、ちゃんと正月休みもとってもらって、働いてもらっています。

休みを取りやすいように、蔵の様子は、スマホでも確認できるシステムを構築をしました。理想的な働き方を実現するために、どういう設備が必要なのか現場の責任者に一緒に考えてもらい、環境整備を行ってきたんです。

取材時には蔵を見学させてもらった

── 数馬さんは、24歳で代表になられたんですよね?

そうなんです。今が10期目ですね。

── 代表になってから売上規模もすごく大きくなったと聞きました。

おかげさまで、製品売上は年々増加しています。地域で仕事をする上で、この実績があるので理解してもらいやすいのはあります。今やっているSDGsを含めた動きをしたほうが結果が出る、と数字でアピールできるのは大きいです。

── それは右肩上がりの急成長を狙ってやったわけですか?

いや、そんなことはないんです。徐々に成長できたんです。

── それでも売上が大きく増加した事実は、すごいことですよね。

いやいや、社員さんがすごいんですよ!(笑)。代表として僕がこうして取材でしゃべらせてもらうことは多いんですけど、僕が何か特別なことをやっているわけではないんです。

漁師との取り組み「海中熟成酒」や「イカ純米」

── お酒は、地域の人々が消費できるから、町づくりに直結している部分が昔からあったと思うんです。

そうですね。それと同時に、お酒は一次産業と密接なんです。農家はもちろん、漁師も。一次産業がなかったら、僕らの仕事も成立しません。

── 「Single Origine Sake 奥能登 海中熟成」は、漁師さんと一緒につくられたんですよね?

酒のボトルを海中に沈めて、熟成させました。きっかけは、僕と洋助(*1)がご飯を食べに行ったお店に、海底に沈めて熟成させたお酒のチラシがあって。「俺たちがいるのに、なんでこれやってないんだろう!」という話になって、一緒にやることにしたんです。

結果的に伊勢丹さんが取り扱ってくれることになって、限定で200本を販売しました。

(*1)能登の漁師集団「日の出大敷」の網元・中田洋助さん
「このままじゃ事業がなくなる」危機感から手を組んだ若きリーダーたち

── やっぱり、海の中で揺れるとお酒は美味しくなるわけですか?

まろやかになりますね。開発メンバーで試しに飲んだとき、みんな同じ感想でした。「まろやか」とか「味に丸みが出た」とか。ゆらゆらして熟成させるって、自然でしか出来ないことですよね。冷蔵庫だと固定になっちゃうから。

── 「いか純米」というお酒も造られていますよね。

いか純米は、能登の海藻由来の酵母を使ったイカに合う純米酒なんです。海の資源をたくさん使おうというのがまず大前提。

海藻から採取した酵母で、仕込み水も海洋深層水を使ってます。能登町の小木(おぎ)地区に、東京大学の学生が「フィールドスタディ型政策協働プログラム」で来てくれたことがあったんです。そのときブレンドをしてもらいました。

「イカに合うお酒」と言うと珍しがられますが、僕たちがやりたいのは、地域資源活用の最大化です。能登町の小木地区は、日本有数のイカ水揚げ量なんですけど。蔵として地域に貢献できるんだったら、僕らとしてはオッケーなんです。

いか純米があったら、「能登はイカが有名なんだ、食べにいこうかな」と思えたりするじゃないですか。みなさんがご飯を食べるときに、それに合う酒を造れたらなといつも考えています。

── めちゃくちゃユニークですね。

このほか、「地域食材特化シリーズ」として、能登牛に合うお酒「竹葉 能登牛純米」、ジビエ料理と一緒に楽しんでもらうための「竹葉 gibier純米」、牡蠣に合う日本酒「Chikuha Oyster」の4シリーズを展開しています。

「竹葉 能登牛純米」は畜産業者さんと取り組んだもので、実際に狩猟をされている団体と「竹葉 gibier純米」を造ったりしていますね。

若いメンバーがチャレンジしやすい社風

── ここまでも「地域資源を最大限活用するんだ」というお話がありましたけど、経営的にも、地域食材特化シリーズのような尖ったお酒を造ることはメリットが大きいんでしょうか?

そうですね。単純にいろんなお酒があったほうが、おもしろいじゃないですか。「あそこまたなんか変なことやってるぞ!」って言っていただくことも多いんですけど、そうやって知ってもらうことで、結果的に定番のお酒の販売にも繋がっていると思います。

── 地元の方の反応はどうですか?

単純に、自分が住んでいる地域のお米で造ったお酒があるなら、それを飲めたほうが喜ばれるのではないかと思います。飲んで美味しかったら、次は他のものも飲んでみようってなりますよね。その結果、日本酒全体に興味を持って頂けることはうれしいですし。

── 数馬酒造のようにこれまでになかったような日本酒を造ることって、他では真似できないものなんですか?

おもしろい日本酒が生まれやすいように、挑戦しやすくてアイデアを出しやすい社風を、僕が代表になってから心がけてきました

よくご評価頂けるのが、スピード感が早いことに加えて、チャレンジ精神がある点です。これは弊社の強みのひとつだと思っていますので、強みを意識した展開を意識しています。

持続可能な醸造環境の構築にチャレンジしてきた中で、「石川県ワークライフバランス企業 知事表彰」を受賞したことも大きかったです。これは奥能登では初でした。成果が出ていれば、みんな認めてくれるんだと思います。

── 社内の雰囲気が若いなあ、と感じました。

そこも、うちの強みだと感じていますね。若さを最大限に活かした商品展開と経営のやり方を心がけています。お酒の味の厳選は経験値だけじゃなくて、チャレンジ精神や創造性といった、新しさを大切にしています。

そして、それを理解し、支えてくれるベテラン社員さんたちがいてくださるから可能な展開だと痛感しています。

経営者としての考え

── 酒蔵業界は、家族に継ぐことが多いんですか?

ファミリービジネスならではの強みを活かしやすい業種だとは思います。今では、他の資本が入ってきて、いろんなやり方の酒蔵があるんですけど。僕はやっぱり、組織としての考え方を伝えていく上で、ファミリービジネスのほうがメリットは大きいんじゃないかと考えています。

── 数馬酒造さんもいずれ継がれる可能性もあるわけですよね。

そうですね。うちは子どもがふたりいるので......でも、願わくば、です。後継者を選んで退くのって意思決定の集大成ですから。どれだけ素晴らしい経営者でも最後に選ぶ人、時期、退き方、を間違えたら一気に会社って崩れてしまう。

その人の成果がどれだけすごくても、です。社員さんやお客さんを、よりよい方向に導くために適切な判断をしたいものです。

── 2、30年後くらいですかね。

ですね。20年も同じ人間が経営してていいのかって感じはありますけどね。10年近く経営を行い、ひとりの人間が長期間にわたり経営することのメリットもデメリットも以前よりよくわかってきました。20年でも長いくらいかもしれません。

24歳でも経営できることはわかってるんで(笑)。それでいうとやっぱり、組織の代表は若いほうがいいよな、と僕は思っています。代わるなら、思いっきり若返ったほうがいいと思います。

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